静岡県は、興津川水系布沢川(静岡市清水区吉原)に国の補助を受けて整備する生活貯水池「布沢川ダム」について、安全度やコスト、実現性などの評価軸に沿って、ダム事業の検証をスタートさせる。28日に馬淵澄夫国土交通大臣から川勝平太知事に対して、ダム事業の検証作業の指示・要請があったことを受けたもの。検討主体の県に加えて、関係自治体の静岡市が「検討の場」を設置して公開で検証する。検証結果に基づき県が対応方針を固めた後、国交省本省が事業の必要性を含めたダム事業の実施方針を決定する。
布沢川ダムは、国の「できるだけダムに頼らない治水」への政策転換に伴い、事業の検証対象となっていた。国交省が昨年12月に設置した「今後の治水対策の在り方に関する有識者会議」では、ダム整備に頼らない方法を含めた幅広い治水対策案の立案手法や、複数の治水対策案を比較するための新たな評価軸の在り方を議論してきた。
28日に有識者会議がまとめた中間報告の中に、ダム事業の実効性を確保するための再評価実施要領が盛り込まれた。これを受けて、国交省が事業主体の県と静岡市に「検討の場」を設け、公開で検証作業を進めるよう求めた。
ダムの具体的な検証方法として、2〜5案程度の治水対策案を立案した上で、それらを▽安全度(被害軽減効果)▽コスト▽実現性▽治水効果の持続可能性▽気候変化などに対する柔軟性▽地域社会への影響▽環境への影響―などの評価軸に沿って、総合的に評価することとした。評価軸の中では、コストを最も重視し、安全度は河川整備計画で想定している目標と同程度の水準とする。
検証結果を踏まえ、県が対応方針を決定し、最終的には国交省が事業の可否を判断する。
県では当初、10年度にダム本体の調査や用地買収の着手を予定していたが、検証結果が確定するまで見送る方針。11年度以降にずれ込む公算が大きい。順調に行けば、12年度にダム本体工事の仮設・水替工事、13年度に掘削工事、14〜15年度にコンクリート打設工事を進め、16年度の完成を見込んでいる。
一方、道路工事については、現在進めている工事用道路(清水富士宮線・吉原バイパス)の整備を12年度までに完了させる。並行して、10年度からは付替道路工に着工し、15年度までに整備する予定。
ダムは、洪水調節・河川維持用水・上水道用水を目的とする多目的ダムとして計画。形式は重力式コンクリートダムで、規模は堤高59・5b、堤頂長155b、堤体積10万7000立方b。総貯水量81万6000立方bのうち、有効貯水量は66万立方bを予定。1993年度に県が事業着手している。
09年度には、建設技術研究所でダムの本体実施設計を進めてきた。09年度の事業費は7億2000万円で、約半額の国庫補助を受けている。
建通新聞社 静岡支社