北海道建設新聞社
2010/09/02
【北海道】土木学会全国大会が札幌で開幕−原点見詰め未来を議論
土木学会(会長・阪田憲次岡山大名誉教授)の全国大会が1日、北大札幌キャンパスを主会場に開会した。3日まで3日間の日程で、研究発表の第65回年次学術講演会(約3450題)と研究討論会(24題)などを開催し、土木の先端技術や将来展望について議論を深める。初日の「百周年記念事業キックオフ討論会」で参加者は「土木は他人の幸福を思う『利他行』が薄れてきた」「土木はテーマを見失った」と原点を省みる核心に迫り、元土木学会長の丹保憲仁氏は広い守備範囲にある土木工学の将来性について語った。
主催は全国大会実行委員会(委員長・高松泰北海道開発局長)。全国の大学や研究機関、行政機関、民間企業から研究者や技術者、学生ら約8000人が参加。道内での開催は2002年以来8年ぶり9回目。
年次学術講演会はキャンパス内の各会場で構造、水理、地盤、計画、コンクリート、建設技術マネジメント、環境・エネルギーなど8部門にわたる論文発表が始まった。発表者は7分の制限時間で成果を紹介し、会場と質疑応答を交わしていた。
研究討論会は1日と3日に行い、初日は13のテーマについて討議が繰り広げられた。その中の討論会「先輩に聞く―環境工学の将来―」では話題提供者が先輩研究者の功績を振り返り、後輩に激励の熱いメッセージを送っていた。
今大会は、2014年に迎える同学会100周年に向けて「キックオフ記念討論会」をスタートさせた。記念事業は本部が企画する「直轄事業」と支部などが企画する「公募事業」を構想している。
準備委員会の藤野陽三委員長は「土木のボトムアップを実現したい」と国内3万人の会員の結集を求め、100周年を契機に具体的な実践を社会に宣言するための徹底的な議論を進める。
全国各支部からは「公共事業が批判され、『利他行』が薄れたのは、技術者が納税者に寄り添っていないからだ」「昔の富国強兵のように土木に対し、国が出すテーマがなくなった」と反省する意見が相次いだ。
別な支部は「ゲリラ豪雨が頻発し、公共事業なしに生命は守れない」と政府が提唱する「コンクリートから人へ」の対応を痛烈に批判した。
土木を社会に理解してもらうためには、「環境は土木の重要な役割になる」「住民が一日たりとも公共事業に接しない日はない」「土木のダーティーイメージを追放することだ」などと具体的な実践≠フヒントになる提案を出し合った。
第87代会長の丹保氏は「土木工学は工学系で唯一マネジメント型の技術者が出せる。成熟した社会の国土設計ができる」と、多元型教育システムの再構築を提唱した。