「地下水、地すべり地形など地質リスクを事前に把握することが、施工管理技術や品質のアップに直結する」。20日に開かれた本紙主催の「品質向上・施工管理術アップセミナー」で、静岡県地質調査業協会の柴田達哉氏が施工前の現地踏査で注意すべき地質、切土や仮設掘削のポイントなどを挙げた。柴田氏は仮設掘削時に「『掘削面の背後に地すべり地形や集水地形がないか』『掘削底面に軟弱な地層はないか』などに気を付けてほしい」と注意を呼び掛けた。
セミナーでは、工事品質の向上・確保を図るための方策を解説。土木・農林工事を施工する元請会社、協力会社の技術者ら250人が参加した。静岡県生コンクリート工業組合の澤瀬博氏、静岡県地質調査業協会の柴田氏と井川淳氏、静岡県交通基盤部工事検査課の鈴木好治検査技監の4人が講師を務めた。
澤瀬氏は、施工性能に基づくコンクリートの配合設計・施工指針などを説明。レディーミクストコンクリート(工場で練り混ぜをしてから打設現場に運送するコンクリート)の強度については「適用する部材の設計基準強度を満たすように設定することが大切」と述べた。場内運送などポンプにより圧送する場合、「配管径や距離などの圧送条件、環境温度などの組み合わせに応じて、荷卸し個所のスランプ(固まらないコンクリートの軟らかさの程度)を設定すべき」と呼び掛けた。
井川氏は、施工時に留意すべき盛土材の活用方法などを解説。過去に被災した道路盛土で得られた締固めデータを調べると総じて低い点を指摘し、「盛土の安定を確保するためには、十分に締固めることが大切な要件」と強調した。特に「集水地形上や傾斜地形上の盛土、高盛土は豪雨・地震時に変化が生じやすい。通常以上の管理基準値を採用することが望ましい」と持論を展開した。
鈴木氏は、発注者の立場から、工事検査時の施工状況や出来形、品質、出来ばえなどの確認手順を説明。請負者が工事の施工方法を示した施工計画書について「マニュアル化している会社が多く、提出された施工計画書の施工方法が実際の工事と違っているケースがある」と注意した上で「自主施工の原則に基づき、請負者が責任を持って作成すべき」と呼び掛けた。
工程管理や安全管理を進める上で、鈴木氏は「出先事務所など各発注機関の監督員とコミュニケーションを緊密に取り、疑問や問題点を早期に解消することが工事成績のアップにつながる」と述べた。
建通新聞社 静岡支社