北海道建設新聞社
2010/08/06
【北海道】北海道開発の枠組み堅持を−札幌で緊急フォーラム
住民の総意で北海道開発の枠組み堅持を―。札幌商工会議所(高向巌会頭)は5日、札幌のニトリ文化ホールで「日本における北海道の役割―北海道総合開発の枠組み堅持と北海道局の存続」と題した緊急フォーラムを開催した。高向会頭は「今、北海道開発の枠組みが崩壊の危機に面している。地域の経済団体として明確な意思表示をする必要がある」と、北海道局廃止による開発体制の崩壊に強い危機感を示した。また、同会議所の食品、観光、建設など各産業の部会長が、それぞれの立場から社会基盤整備と北海道開発体制の必要性を訴えた。
北海道局をめぐっては、前原誠司国土交通相が、2011年度に国交省の新たな局の設置などの組織改正を明言する中、道内で危機感が高まっている。先月7日には、帯広商工会議所と十勝管内商工会連合会が緊急総決起大会を開催。今月に入ってから旭川と留萌でも同様の大会が開かれ、北海道局廃止反対と北海道開発体制堅持を求める決議を行っている。
この日、緊急フォーラムの会場となったニトリ文化ホールは、会員企業の社員ら約3000人が参加。冒頭、あいさつに立った高向会頭は「今、北海道開発の枠組みが崩壊の危機に面している。現在の方針は『投資効率』を重視するあまり、北海道が切り捨てられる、という強い懸念を抱いている」と指摘。「北海道局の廃止により、総合的な開発の枠組みが崩壊すると、建設業だけではなく資材や運送、飲食店などすそ野産業も弱体化し、雇用や消費、税収も大きなダメージを受ける」と述べた上で「地域に及ぼす影響や地元の理解、そして今後の北海道の総合的な開発の在り方が十分に議論されず、将来ビジョンも示されないまま進められようとしていることは決して容認できない」と、地域の経済団体として強く反対する姿勢を明らかにした。
また、各産業からは「北海道が課せられている食料供給力の持続的発展を維持・向上させていくためには北海道局の果たす役割は非常に大きい」(池田光司食品部会長)、「北海道局の存在は道内観光産業の競争力を高めるために非常に重要であり、今回の存廃問題は業界に大変な不安をもたらしている」(広川雄一観光部会長)、「国交省の中に北海道局がなくなるということは、中央官庁で政策立案・予算確保を行う組織を失うということ。建設業界だけではなく、北海道の経済全体に大きな影響を及ぼす」(坂敏弘総合建設関連部会長)―など、それぞれの立場から北海道局の必要性をアピールした。
学識者からの意見発表としては、小林好宏北大名誉教授が「北海道開発が日本に対して果たす役割は2つあり、一つは日本社会にとっての望ましい姿を示す先導的役割、もう一つは日本の弱点を補うことだ。しかし最も重要なことは、わが国の20%を占める国土の維持管理と発展を担ってきたという役割は今後も一貫して変わらない」と、北海道開発体制に基づく社会基盤整備の着実な推進を訴えた。
来賓は、民主党北海道の佐野法充幹事長と自民党道連の神戸典臣会長代行、自治体から高井修副知事と上田文雄札幌市長らが招かれ、佐野幹事長は「政府の成長戦略に盛り込まれたグリーンイノベーションなどを実現するためには北海道の役割は重要。北海道開発体制はこうした施策実現のためにも欠かせないものであり、組織の在り方について、守りの議論から攻めの論理を構築していくことが必要」と語った。神戸会長代行は「北海道には世界に誇る自然や高い食料供給力などの優位性がある。わが国の発展に貢献するためには、高規格幹線道路など社会基盤を計画的かつ着実に進めていくことが不可欠だ」と主張。高井副知事、上田市長も開発体制の枠組み堅持の必要性を強調した。
大会の最後には、北海道総合開発の枠組み堅持などを求める大会決議を採択。高向会頭が佐野幹事長と神戸会長代行に、決議文を手渡し、岩田圭剛副会頭の発声により、開発体制の堅持を全参加者でシュプレヒコールした。