全国初となる公契約条例を昨年9月に制定し、今年4月以降に締結する契約から適用している野田市は、条例の一部を改正することとし、16日からパブリックコメントの手続きを開始した。意見の募集期間は8月16日までで、郵送の場合は総務部管財課、持参の場合は同課のほか市役所1階総合案内、関宿支所(いちいのホール1階)、各公民館および図書館に設置した意見投函箱、さらにファクシミリ(FAX04−7122−1557)および電子メールでも受け付ける。市は9月議会に条例改正案を提出し、議決後できるだけ早い時期に施行したい考え。
今回の改正の目的は大きく三つ。一つ目は、業務委託における適用範囲の拡大と職種別賃金の導入。現行条例では、対象とした3種類の業務委託(施設の設備または機器の運転管理業務および保守点検業務ならびに施設の清掃業務)について、市と契約した受注者は、当該業務に従事する労働者(下請負者に雇用される者等を含む)に対し、千葉県の最低賃金である時間給728円を101円上回る829円を支払わなければならないとしている。これにより、清掃業務については県の最低賃金ぎりぎりだった賃金水準を引き上げることができたが、施設の設備または機器の運転管理業務と保守点検業務については元々時間給が829円を上回る賃金水準だったため、実質的効果はなかった。
このため、業務委託についても時間給829円という単一の基準ではなく、工事と同様に職種別の賃金水準が必要と考えられることから、職種別賃金の設定が可能なように規定を改正する。さらに、予定価格1000万円未満の清掃業務は現行条例の対象になっていないことから、清掃業務のように実態が低賃金で速やかに是正しなければならない業務について、予定価格1000万円未満のものも条例の対象とする規定を追加する。
市としては今後、条例の対象とする業務委託の種類を拡大していく考えだが、工事(工事の基準は、51職種について農林水産省および国土交通省が公共工事の積算に用いるため毎年度決定する公共工事設計労務単価の80%の額)と異なり、業務委託には基準を設定する際に基礎となる公的な客観的指標がほとんどないため、職種別賃金の設定が可能なものから順次、対象となる業務を拡大していく。
二つ目の目的は、継続雇用の確保。入札により受注者が変わった場合、当該業務に従事する労働者が職を失ったり、仕方なく労働条件を低下させて新受注者に雇用されることが多いことから、新受注者に対して、従前の受注者に雇用され、当該業務に従事していた労働者を雇用するよう努めなければならないとする努力義務を課す規定を加える。労働者の継続雇用を条例で義務づけることは法的に困難なことから、努力義務を課すにとどめる。また、受注者側としては、単年契約では正社員としての雇用は難しいとの声もあることから、現行制度の中の運用で対応が可能な長期契約継続の拡充が継続雇用の確保にもつながるとして、市長が長期継続契約の拡充など必要な措置を講ずべき旨の規定も加える。
三つ目の目的は、下請負者への適正な請負額の確保。下請負者は請負額が低いと、従事労働者の賃金を確保することで自らの経営自体を危うくする危険があるため、建設業法や下請代金支払遅延防止法など下請負者を保護する規定を設けている法令の趣旨に沿って、条例でも「受注者は、建設業法または下請代金支払遅延等防止法を遵守し、下請負者との契約を締結するにあたっては、各々の対等な立場における合意に基づいた公正な契約としなければならない」という趣旨の規定を加える。また、一定水準以上の落札額(適正な落札額)を確保するため、低入札価格調査制度の拡充等の措置を市長が講じなければならない旨の規定も加える。
提供:日刊建設タイムズ