若年者の建設業入職の円滑化を図るため、業界と高校との連携を強化しようと、静岡県建設業協会・労務委員会(大石夘吉委員長)と専門高校8校との意見交換会が17日、静岡市葵区の県建設業会館で開かれた。参加した専門高校は「建設企業からの求人が少ないため、製造業に就職させざるを得ない」といった厳しい現状を紹介するとともに、「現場見学会が相互理解に有効」として積極的な実施を求めた。一方、協会側は「企業が求める人材と教育内容のギャップがある」「高校生の場合、大学生と比べて採用の判断が難しい」などの課題を指摘した。県建協では、今後も意見交換会を継続したい考えだ。
開会に当たって、県建協の薩川諭常任理事が「若年者の人材確保が無くては、建設業の持続的発展は考えられない。双方の問題点を明確にして理解し合い、連携する機会にしたい」とあいさつ。島田工業高校の加藤智久校長は「安定した出口が用意され、安心して教育ができるのが理想。そのような責任を果たしていきたい」、県教育委員会の遠藤克則主席指導主事も「採用枠の拡大につながれば」とそれぞれあいさつした。
各校から卒業生の進路を報告する中で、▽建設業からの求人が他の産業と比べて遅い▽求人が少ないので、製造業に就職させざるを得ない▽企業が大卒採用に切り替えているため、進学するよう指導している▽女子の求人がない−−といった現状を紹介。
各地区協会が実施している現場見学会に対しては、「見学会の後に行う意見交換会は、双方が理解し合うのに有効だ」「定員割れで他の科から入ってきた生徒でも、見学会で建設業に興味を持つこともある」と評価し、協会に積極的な実施を求めた。
さらに「高校から土木科が無くなりかけているが、絶対に無くしてはならないと必死に訴えている。ぜひ、業界もイメージの改善に向け、マスコミを利用して必要性をアピールしてほしい」という切実な意見もあった。
協会側からは、▽求人が少ないのはその通りだろう。社員をどうやって食べさせていこうか悩むほどの苦しい現状だ▽大学生の場合は一人ひとりと会って人物を理解できるが、高校生の場合は先生から「この子を…」というケースが多く、人物を判断しにくい▽求めるのはデザイン専門ではなく、現場施工の技術者だから、高校の教育内容が生かせない▽最近の高校生は技量が落ちているし、就職するという意識が薄い−−など、率直な意見が出された。
インターンシップで生徒を受け入れた企業からは、生徒の素行などでのマイナス面を明確に学校側に伝えるべきだとの意見があった。その一方で、「受け入れたことで生徒たちから感動を受けた。あらためて自分たちが業界に入ったころを思い出し、何としても頑張ろうと思った。われわれ自身が刺激を受けている。何とかしたいと思った」という担当社員の言葉が紹介された。
建通新聞社 静岡支社