静岡労働局がまとめた「建設業労働条件自主点検」結果によると、労働条件を書面交付しないで口頭だけという事業場が、点検表提出事業場の1割を占めるなど、労働時間や賃金支払などで是正が必要な事業場も見られた。同局では、2010年度に説明会などさまざまな機会を通じて、建設業界に今回の点検結果の周知を図る。11年度は個別事業場に対する監督指導も実施する方針でいる。
自主点検は、静岡県建設業協会会員企業を中心に、大手ゼネコンや完成工事高の上位企業を合わせ県内709事業場を対象に実施。うち提出のあった513事業場の点検結果をまとめている。
点検結果によると、変形労働時間制を採用していない事業場が152事業場(全体の30%)に対して、完全週休2日制を採用が112事業場だった。変形労働時間を採用しないなら、完全週休2日制とする必要があることから、同局では「制度に対する理解が不十分な点があるのではないか。運用に疑問が残る」と指摘している。
時間外労働・休日労働については、35事業場(同7%)で「36協定」の締結または届出がされていなかった。また、54事業場(同10%)では時間外・休日労働が「ない」と答えていた。
労働時間の把握方法を見ると、「タイムカードなど」が全体の約46%、「使用者が把握し記録」が約26%、「日報や自主申告」が約28%。労働時間の把握方法について、監督署窓口に相談が寄せられる事例が散見されているという。このため同局では、日報や自主申告による把握の場合、「適正かどうかをチェックする体制づくりや、適正に申告できる社風づくりが必要」と話している。
また、割増賃金について、「適正に時間数を把握して全額を支払っている」のは全体の約8割に当たる401事業場。これに対し「毎月定額で支払っている」、「営業手当など別の手当で支払っている」がそれぞれ51事業場、54事業場あった。これら定額払いの105事業場(同21%)については「実計算した場合の割増賃金額を下回らないよう十分な配慮が必要」とみている。
年次有給休暇の取得率で最も多いのが「10%以上30%未満」で30%、次いで「50%以上」が20%、「10%未満」と「30%以上40%未満」が共に13%。こうした分布から推測される平均取得率は37%前後で、全業種・全国平均の46・6%を10ポイント近く下回る数字だった。
同局では、従来建設業に対しては安全確保を主眼に監督指導してきたが、今回の調査結果から「過重労働による労災事案の増加、労働条件をめぐるトラブル事案の増加に鑑み、今後、労働条件面の監督指導も併せて検討する必要が認められる」と判断している。
建通新聞社 静岡支社