老朽化が著しい名勝無鄰庵(左京区南禅寺草川町)の整備を進める京都市文化市民局は9日、左京区の京都市国際交流会館で、第3回名勝無鄰庵庭園整備検討委員会を開催。委員会では、「指定管理者制度が導入できる可能性が大きい」とする報告がなされるとともに、無鄰庵の整備については、主屋北側に通路を新設することで、主屋と庭園で来館者の動線を分割するなどを含む保存管理計画案などが示された。
無鄰庵の整備手法について同局の委託を受けている滑ツ境事業計画研究所(京都市左京区)の報告書によると、無鄰庵が文化財であることで修理が仕様発注となることや事業規模が小さいことから、PFIの成立要件が満たされなかった。しかし、指定管理者制度については、委託範囲などを検証をした上で、「導入できる可能性が大きい」とした。
また、同社作成の無鄰庵庭園保存管理計画案では▽山県有朋案内順路に基づく参観順路の見直し▽建物内機能の整理▽近代数奇屋空間が体験できる場としての空間整備▽修理財源確保のため、民間活力の導入と基金の設立―の4項目を活用方針として示している。
提案は、主屋北側にあるW約1mのスペースを庭園に抜ける動線として確保し、庭園と建物の来館者をわけることで、年間4万人が訪れる園路など施設への負荷を軽減させるもの。整備行程を4段階に区分している。
計画案によると、第1段階では案内順路の変更に伴い、大石前の園路、茶室北側コケ地の園路、石碑前の調査に基づいた園路を整備し、坪庭や中庭も着手するほか、茶室雨戸建具が収容できるように修理を行なうとしている。第2段階では、玄関から庭園導入部の整備として、主屋北側塀の控え柱やり替え、玄関周辺の室礼などの整備に取り掛かる模様。第3段階では、トイレ・給排水設備の整備として、茶室の給排水設備や老朽化したトイレの設備更新を想定。最終の第4段階で、耐震補強工事などを含む建物・庭園の本格的な整備を進め、近代数奇屋が体験できる空間を整備していくとしたものとなっている。
最後に同局は「文化財の保存に執拗に固執することなく、無鄰庵の利活用という観点を取り入れ、整備を進めていきたい」と意気込みを語った。