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建設経済新聞社
2010/03/10

【京都】適正な参加資格設定、総合評価拡充など 府の入札・契約のあり方で提言 設計変更など受発注者問題にも言及

 京都府は8日、公共工事入札など京都府の公共調達に係る取組みをまとめた。昨年3月に設置した京都府公共調達検討委員会(郷原信郎委員長・桐蔭横浜大学法科大学院教授)の報告書として取りまとめたもので、適切な入札参加資格の設定や総合評価方式の拡充とその方向性、設計変更ルールなど受発注者間の関係−など8項目を提言としている。府では、今回の委員会提言を受け、可能なものから速やかに実施していく。
 今回まとめられた報告書では、まず公共調達における基本的な考え方と課題を抽出。基本的な社会的要請として利便性の高い良質な社会的資本を可能な限り低価格で整備することや、地域雇用の安定化、地域産業の振興、環境問題のへの取組み、災害対策などを上げたうえで、コスト負担のあり方の適正化を課題とし、透明な制度の中で十分な説明責任が果たせるように、費用対効果という意識の下で実現していくことを明記。また競争の健全化、適正化では、企業の受注機会拡大と「あるべき企業像」の明確化。品質保証への不安対処として、ダンピング対策としての最低制限価格等のあり方の問題と、総合評価方式におけるさまざまな社会的要請に係る評価の反映を上げた。このほか契約関係の見直しでは、契約内容に応じた受発注者間の適正なリスク分担。発注者と受注者との関係では技術強化、成績評定等を適切に反映した仕組みづくり。発注者の能力向上では、発注者におけるスキル(品質確保、コンプライアンス)のある人材の登用と育成を示した。
 これらの基本的考え方や課題を踏まえた上で出された8項目の提言は、次の通り。
提言1 府が求める企業像の明確化と企業評価への反映
 京都府が行う公共調達、公共工事を担うに相応しい受注者の企業像を、社会基盤整備の特性や地域社会における意義、コンプライアンス等、公共調達、公共工事にかかわる社会的要請を踏まえつつ明らかにし、これらを契約者選定にかかわる企業評価に適切に反映させること
提言2 適切な入札参加資格の設定
 上記で明らかにされた「府が求める企業」がより受注機会を得られ、その成長志向にインセンティブを与えるよう、公共事業費の減少局面における企業分布の均衡化を目指す等級区分のあり方(大括り化)、主観点数の拡大、企業規模に応じた地域要件等、入札参加資格が適切に設定されること。また、これら入札参加資格の設定に際しては、競争性の確保に十分に配慮すること
提言3 総合評価方式の拡充とその方向性
 品質確保等、公共工事の社会的要請によりよく応えていくために総合評価競争入札方式の拡充を更に図っていくこと。その際、価格以外の評価の要素について試行内容を十分検証すること。現在試行している「地域活性型総合評価競争入札」については、経済情勢の動向を踏まえ評価項目について十分検証し、その趣旨を踏まえつつ、更なる改善へとつなげていくこと
提言4 最低制限価格の見直し
 最低制限価格の設定水準については、前回の見直しからの経過期間がその効果を検証するには短く、見直し効果の検証には時間的に十分とは言いがたいが、厳しい経済雇用情勢が長引いている点、また、見直しの目安になる国等の基準の再改正の趣旨が、工事管理にあたる従業員の給料手当や法定福利費、下請の一般管理費等に相当する現場管理費を確保することにあるといった点を考慮して、適切な見直しを行うとともに、下請も含めた適正な労働環境を確保する仕組みを構築すること
 また、工事監督や検査等を通じて、完成物の品質確保が容易な工事についても、安全管理等履行経過も含めた品質確保を考慮すべきであり、最低制限価格を設定すること
提言5 低入札価格調査制度の運用
 低入札価格調査制度にかかわる現行の適用範囲となる工事のそのほとんどがまだ未完成であり、総合的な観点でのメリット・デメリットの検証が十分できているとは言えないことから、当面は現行の枠組みを維持し、検証を継続すること。なお、受発注者の負担軽減のために調査手続きや調査資料を可能な限り簡素化し、低入札調査に際して資料の提出が出来ない非協力業者に対しては、ペナルティを課す等の低入札の抑制対策を講じること
提言6 受発注者間の関係、発注者側の体制見直し
 より透明で公正な契約者選定、契約手続きを実現するために、適切な設計変更ルールの確立や契約におけるリスク負担のルール明確化などの受発注者間の関係適正化のための取組みを行うこと。また、発注者側の工事監督、検査体制を強化するとともに、技術系職員の技術力継承及び入札契約にかかわる知識の向上のための継続的な取組みに努め、これらの者の必要な人数と予算化の確保を行うこと。さらに、工事の品質確保の観点から、工事完成時の品質確認のみならず、低入札工事の完成後の品質チェック、モニタリング等に努めること
提言7 予定価格の公表時期
 入札・契約手続きの透明性の確保や不正行為の防止の観点から行われている予定価格の事前公表については当面は見直す必要はないが、一方で課題とされている弊害に関して不良不適格業者の排除、効果的なダンピング対策など、その対策を一層徹底すること。事前公表、事後公表のメリット、デメリットについて京都府の実情に照らし合わせて継続的に検証し、今後の対応策を慎重に見極めること
提言8 PDCAサイクルの実践
 入札・契約制度の変更に際して、改善措置を段階的に実施し、その結果を徹底的に事後評価し、次の改善につなげるPDCAサイクルを実践すること。その際、このサイクルを適正化、機能化させるために、中立的、客観的判断が可能となる仕組みづくりをおこなうこと