宇治市教育部がこのほど明らかにした(仮称)第一小中一貫校整備事業に係る実施設計によると、工事工程計画では、22年7月から24年3月までの約21ヵ月をT期工事@として、現在の宇治小学校グラウンド上に新しい校舎棟及び第二体育館(武道場)、プール、サブグラウンド、遊具スペースなどを整備。24年4月から24年10月までの約7ヵ月をT期工事Aとし、既存の宇治小体育館を解体するとともに、第一体育館を建設。24年11月から25年2月までの約4ヵ月をU期工事として、宇治小の校舎を解体撤去。グラウンド整備と外構工事を行う。これらに先行して、22年5月頃からプール、育成学級、百周年記念館、体育倉庫等の解体を行う。 小中一貫校の工事は、先行解体工事、T期工事@、T期工事A、グラウンド整備等の4件の契約になる模様。 同市は入札・契約制度改革において、総合評価競争入札の試行を表明。現在、試行要領の策定中で、今年度内に内容が明らかになる。総合評価の導入案件は施工業者の決定までに時間がかかることから、小中一貫校の工事では導入が見送られるとみられる。 全体の建物概要はRC造+SRC造一部S造地下1階地上4階建、延約1万5644u(建築面積約5700u)。建物高さは約15m。災害時の避難所に位置付けられた施設として、耐震安全性の分類で構造体は「U類」とし、建築基準法で規定されている耐震性能に対して1・25倍の耐震性能の確保を目標とする。 主な建物は、▽教室棟1…RC造地下1階地上3階建▽教室棟2…RC造一部S造地下1階地上4階建(最上階にFRP製の25mプールあり)▽教室棟3…SRC造地下1階地上3階建▽体育館棟1…SRC造+RC造+S造地下1階地上3階建塔屋1階▽体育館棟2…SRC造+RC造地下1階、地上は外部サブグラウンド▽スポーツストリート…RC造+S造地下1階、地上は中庭。 エレベーターは教室棟2に1基設置する。荷物用エレベーターも1基設置する。運動場はメイングラウンド8296u、サブグラウンド981u、各種遊具を集めた遊具スペース748u、第一体育館屋上の運動スペース698uで、合計面積は約1万0723u。 敷地西側の府道京都宇治線沿いに正門を配置。教室棟1は北側、教室棟2は東側、教室棟3はほぼ中央に配置。正門を入って正面に第二体育館、正門南側に第一体育館を置き、メイングラウンドは敷地南側に確保する。 実施設計の基本コンセプトによると、〈きずなで育む9年間のまなびの場〉をテーマに、「小学校6年間・中学校3年間の計9年間を前期(1〜4年)・中期(5〜7年)・後期(8・9年)のまとまりに即した教育指導が行える」「異なる学年の交流ができる」「機能性や柔軟性を持つことで多様な教育内容や教育方法に対応できる」「子どもたちの安全・安心を確保し快適に生活できる」「地球環境やまちづくりに配慮した地域のシンボル」「生涯学習やコミュニティの拠点」などを掲げた。 敷地内の動線計画によると、敷地西側の正門のほか、東と西に通用門を設置。前期と中・後期に区分けされた昇降口を設ける。昇降口から前期と中・後期の教室への階段、廊下を分けて、動線を分離。給食関係車両や来校者などの車両進入路を確保し、児童生徒との動線を分離する。グラウンド整備用の門を南東に設ける。 北東側のいこいの園は児童生徒のゆとりの空間として再整備するとともに、ビオトープを設置する。 管理教室は教室棟の1階に集約。校長室からいこいの園、職員室からメイングラウンド及び昇降口といった風に管理各室から多方面への視野を確保。正門・通用門等には監視カメラを置く。見守り活動が機能するよう正門の横に控え室を設置する。 前期の普通教室まわりをみると、普通教室・特別教室を北側の教育棟1の2階・3階に配置。廊下や階段、トイレなどは中・後期の児童生徒と日常的に混在しない設計とした。保健室は前期児童の教室から最も近い位置に置き、可動式間仕切りで多目的な使用に対応させる。児童と教職員との日常的な教育相談が可能なオープンカウンターの教師ステーションを置く。大きな制作物を展示できる吹き抜け空間として作業ギャラリースペースを設け多目的に利用する。1〜3階の各階に教具庫を設置、社会人講師や学生ボランティアの授業準備などに活用するボランティアルームも設置する。学年ごとに男女トイレを設置、手洗い場は〈コーナー〉として設置し、廊下の水漏れを防止する。2階と3階には給茶コーナーを設置する。 中・後期の普通教室まわりは、中期のまとまりを教師ステーションを挟んで配置。後期のまとまりは教師ステーション前付近に配置する。2階及び第一体育館に更衣室を設ける。前期と中・後期の教室双方から移動しやすい位置に特別教室を集約、配置する。音楽室と図工・技術室には防音機能を持たせる。バルコニーは1〜3階まで立体的につながりを持たせた幅広のものとする。 交流サロン・メディアセンターまわりをみると、交流サロンは、吹き抜けを介して、内部・外部から活動が見える小中一貫校のシンボルとし、学年集会やランチルームなどとして利用可能な大空間を確保。太陽光を取り入れ、明るく自然対流を活用した設計とした。 メディアセンターは、学びの基地に位置づけ。図書とコンピュータを使っての調べ学習に対応。2階には前期児童向けの読み聞かせスペース、3階には調べ学習スペースを置く。交流サロンに近接して、地域歴史資料室を設け、小さな集会に使える会議室、宇治小学校百周年記念館の収蔵物を収めたり、展示したりできるスペースを確保。畳敷きで茶の湯が点てられる作法室も設ける。交流サロン、地域歴史資料室、作法室のほか、第一及び第二体育館は地域開放エリアと想定。教室棟とは別の管理区域とし、立ち入りができないよう配慮した。 同市は大久保小で10kwの太陽光システムを導入しているが、小中一貫校では、教室棟1の屋根に20kw規模の太陽光発電パネルを設置、発電量などを表記し環境教育に役立てる。校舎に降る雨水の一部は植栽への自動灌水、トイレの洗浄水などに利用。自然対流による換気システムや省エネ照明器具を採用する。 設計は佐藤総合計画関西事務所(大阪市中央区)。
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