国土交通省関東地方整備局は、インターネットを活用した工事説明会の試行を検討している。約7年ぶりに試行した工事説明会で一定の効果が認められたためで、さらに一歩進んだ方式での実施を図る。インターネットを通じて動画と音声を配信し、工事や総合評価の概要を説明。入札参加者の質疑応答などもリアルタイムで受け付ける。工事が求める技術を事前に周知し、的確なVE提案書の作成を促すことが狙い。入札参加者を集めないため、談合の防止にもつながる。2010年度の早い段階で試行する方針だ。
総合評価では、発注者の意図が正確に伝わらないため、評価と直結しない過剰な技術提案が行われるケースが頻発している。公共工事の削減によって受注を目指す入札参加者の競争が厳しさを増す中、1社当たり10件以上の質問書を提出するのが通例で、一つの工事で発注者に100件以上の質問が寄せられることもあるという。質問書とこれに対する回答のやり取りは受発注者双方の大きな負担となっており、有効な対策が求められている。
インターネットの工事説明会は、09年度に九州地方整備局で1件の試行例がある。
九州地整の方式では、発注者が生中継で工事説明の動画を配信。入札参加者は指定されたアドレスに接続し、パソコン上で視聴する形を採っている。工事概要や技術提案に対する質問はファクスや電話で受け付ける。中継を通して回答するため、入札参加者が一堂に集まった工事説明会のように、受発注者間で情報を共有することが可能だ。
関東地整も09年12月4日公告の「北千葉道路松崎跨線橋上部工事」(1月5日申請書など提出締め切り、2月18日開札)で、02年に中止して以来、約7年ぶりとなる工事説明会を開き、以前と同じスタイルで入札参加者を集めて案件の説明と質疑応答を行った。その結果、現段階で技術提案にかかわる質問書の提出は数件にとどまっているという。
道路部では「入札参加者の疑問点は共通していることが多いし、特記仕様書をよく見れば分かる場合もある。説明会で事前に発注者の考えを伝えた効果は大きかった」と話す。
この試行を踏まえ、関東地整では工事説明会を継続すべきと判断。さらに談合の可能性を排除するため、インターネットを活用した方式による実施を検討する。
関東地整は今後、九州地整の方式を基本に工事説明会の詳細を詰める。企画部は「提案内容の向上と入札にかかわる事務量を減らすことが目的で、新たな取り組みでかえって手間を増やすようでは意味がない。受発注者双方にメリットがある仕組みをつくりたい」と話している。
提供:建通新聞社東京支社