北海道建設新聞社
2009/11/26
【北海道】道路整備に新たな便益算出法−開発局が事業再評価で
北海道開発局の事業審議委員会(委員長・加賀屋誠一北大大学院工学研究科教授)は25日、札幌第1合同庁舎で、道路を対象とした事業再評価を行った。事務局の開発局では、従来の走行経費減少などの便益に加え、道路整備に伴う定時制確保を、制約時間の短縮ととらえ便益として算出した。加賀屋委員長は、こうした新たな便益を事業評価に採用する試みに関して、「北海道の地域特性を考えると、便益をさまざまな観点から検証することは評価できる」と話している。
今回の再評価は、高規格幹線道路や地域高規格道路など、継続中の10事業が対象となった。新規に加えて、継続事業に関しても、費用と整備効果が厳しく精査される中、今回の委員会では、総事業費の増減や便益算出の手法、そして救急医療機関へのアクセス向上など、事業ごとの特性を踏まえて新たな便益を算出し、委員に提示した。
事業費の増減では、従来暫定2車線での事業費から、事業評価をより厳格に行うため、計画断面を4車線にした場合の事業費増や埋蔵文化財発掘に伴う費用なども詳細に提示。費用対効果(B/C)算出の際の透明性を確保した。
また、便益の算出では、走行経費や交通事故減少など従来の3指標に関するバックデータや地域特性を踏まえた新たな便益についても、試算値として提示。新たな便益に関しては、6月の委員会でも示した救急医療機関へのアクセス向上による救命率を踏まえた便益のほか、道路整備に伴う定時制確保により、出発時間を遅くすることが可能となり、それによって生まれた時間で他の活動が可能になるとの観点から、この余裕時間を便益として算出し、今回の委員会で提示した。
新たな便益は、10事業すべてでカウントされ、総額では函館茂辺地道路で117億円、当別バイパスでも110億円に達している。また、富良野道路と留萌拡幅は、医療と余裕時間に加え、夏の観光シーズンに発生する渋滞緩和効果も試算されている。これらの便益を計上した場合、大部分の事業でB/Cが0・1―0・2上昇している。
委員からは「観光振興の点で、道路整備の効果は大きく、他の道路でも便益の算出をすべき」「単一の事業ではなく、ネットワーク全体で評価しては」「拡幅事業は時間を要するということを住民や観光客にもっと伝える方法を考えるべき」―などといった意見が出た。委員会ではこうした意見交換を踏まえて、10事業すべてについて、原案通り継続を妥当と判断した。