県内自治体のうち、12市と2町が予定価格を事前公表している。4月に国土交通省らが、事前公表の取りやめを通達したのにもかかわらず、依然として県内では3分の1を超える自治体が入札前に予定価格をオープンにしているのが現実だ。事前公表されれば、その価格から最低制限価格を逆算しやすくなり、傾向として応札価格の極端な下落を招く可能性もある。地域の雇用確保や建設業の健全な発展のためにも、事前公表の見直しが求められる。【各自治体の予定価格の公表状況は23日付2面参照】
事前公表している自治体は、伊東、熱海、三島、御殿場、沼津、富士、富士宮、静岡、焼津、掛川、磐田、湖西の12市と長泉、吉田の2町。2008年7月に本紙が実施した前回調査よりも、自治体数は増加している(前回13市町)。
2市2町では公表方法を事前、事後と併用している。長泉町は事前公表の範囲を「2000万円以上」と定めているほか、吉田町は抽選型指名競争入札は事前、制限付きは事後で公表。焼津市、掛川市も事後との併用で運用している。
予定価格を事前公表する理由として、多くの自治体では職員に聞き出すなど行為を避けるための「不正漏えいの防止」や、入札の透明性確保などを挙げている。
しかし、予定価格が入札前に明らかになることで、応札者にとっては最低制限価格が容易に推察できるようになる。積算能力の伴わない企業が落札するケースが増える一方で、積算能力のある業者の落札機会が減少することにつながる。
事前公表自治体の工事案件の平均落札率(2008年度)は、5市1町が90%以上を確保しているものの、残る7市1町は80%台にとどまった。ただ、どの自治体も80%を切るような平均落札率の極端な下落が見られなかったことは救いだ。
ちなみに、事後公表で落札率が90%を下回った自治体は、比較的予算規模が大きく発注工事数が多い浜松、富士の2市と芝川町のみ。
この数字のみを判断すれば、事前公表が落札率の低下を助長している側面もある。どうしても、最低制限価格付近に入札価格が集中し、くじ引きで落札者が決まるケースが多く、適正な競争環境が確保されているとは言い難い。
国土交通省と総務省は4月に、予定価格の事前公表取りやめを都道府県・政令市に対し通知している。しかし、他の市町までには、その狙いや意図が深く浸透し切れていないのが実情だ。
地域の基幹産業である建設業の採算性確保を視野に入れた場合、予定価格の事前公表の見直しは必要不可欠。各自治体には、すぐにでも事後公表への移行を前提とした検討に着手してもらいたい。
建通新聞社 静岡支社