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建通新聞社(中部)
2009/08/10

【愛知】宮田英治・中部地方整備局長が会見

 7月24日付で就任した国土交通省中部地方整備局長の富田英治局長が6日に記者会見し、製造業の国際競争力を支えるインフラ整備や防災対策についての取り組み方針を示した。富田局長は、厳しい国際競争にさらされている製造業にとって物流の効率化、迅速化、コストの削減が必須の課題となっており、それを支えていくための港湾や道路ネットワークが「きわめて大切な社会資本」であると指摘。外国に対抗していくために「さらにスピード感を持って整備を進めていく必要がある」との認識を示した。また、防災面では、ゲリラ豪雨や大規模地震、台風、高潮災害など自然災害への備えの重要性を強調。中部地方が日本最大のゼロメートル地帯を抱えていることを踏まえて「伊勢湾台風から50年目という節目に、あらためて危機管理や防災対策をどのようにしていくのか見直していきたい」と話し、名古屋港などの高潮対策を再検討する考えを示した。
 景気対策としては、整備局でも過去に例がない大幅な前倒し発注に努めていることを説明。地域経済を下支えするために「地元の企業にしっかりと仕事をしてもらう取り組みをしたい」と話した。さらに低価格入札に対して「工事の品質を低下させるのではと危惧している」とし、価格だけでなく、技術力でしっかり仕事をして勝負してもらう仕組みづくりを県や市町村でも進めていく必要があり、連携・調整を進めていると説明した。また、木曽川水系連絡導水路事業からの撤退を含む再検討を名古屋市の河村たかし市長が表明している問題については、「名古屋市が一定の結論を出すと思うので、状況を見守りながら、必要な連絡・調整を図りたい」と話すとともに、導水路事業が必要不可欠な事業であることをあらためて強調した。
 個別施策についての発言内容は次の通り。
―防災対策
 「名古屋港の高潮堤防の耐震化などを含め、高潮に対してどういう備えをするべきかをもう一度見直し、総合的な対策を打ち出していく。高潮堤防は伊勢湾台風直後に整備されたものであり、防潮堤も老朽化してきている。土地利用の形態も変化し、埋立も進み臨海工場地帯となっている。そういう状況をもう一度きちっと見直す必要がある。検討作業を進めており、秋口にシンポジウムを開催し、議論していただきながら方向性を打ち出すことも考えたい。川でも海でも堤防の内側(堤内地)はきちっと守られるが、堤防の外側(堤外地)はある程度水に浸かることはやむ得ないという前提で考えている。しかし、これだけいろいろな工場が堤外地にできてくると、本当にそれで良いのか議論していく」
 「ハードでいろいろな対策を講じていくことも重要だが、想定外の台風が来れば堤防、防潮堤も壊れる可能性がある。必ず災害が起こると思っていないといけない。その時に誰がどう行動するのか、あらかじめ想定して仕組みや枠組みづくりをしていくのが、もう一つの大切なテーマだ」
―建設ICT
 「少子高齢化社会になってくると、担い手の数も相対的に減ってくるので、情報化、自動化、機械化は絶対に避けて通れない。建設ICTの導入は、建設業のイメージアップにも寄与する。効率化し安全になり、なおかつクリーンになる。非常に良いことであり積極的に進めたい。最終的な主体は民間の企業になるが、なかなか難しい面もあるので公的なサイドからできる支援はできるだけやっていきたい」
―低入札対策
 「工事では低入札事案がかなり少なくなったが、コンサルタント業務は低入札案件が減らず、むしろ増えている状況。第三者の照査や品質担保を求めたり、配置技術者に制約を設けたりと、いろいろな取り組みをしているが、まだまだ十分ではない。動向をみながら必要とあれば、さらに対策を講じていかなければいけない。業務の場合、なかなかコストの構成が工事のように明確にならない。設計や調査の成果は、後になって出来が悪かったとわかる。たちどころに評価できないところもある。それだけに発注者と受注者の信頼関係が大事になる。低価格入札が常態化する状況だと、お互いの信頼関係を保てるだけの水準の仕事が確保できなくなるのは明らか。早くしっかりとした手を打たなければと思っている」