|
「今こそ継続的な信頼関係を」と絹川会長 |
|
|
今年6月、全国建設産業団体連合会の新会長に就任した絹川治会長。総合評価落札制度という画期的なダンピング対策が導入されたにも関わらず、過当競争が続き、業界が荒廃しつつある中、どこに解決策があるか聞いた。
―抱負をお聞かせください
絹川 小泉改革以降、元請・下請ともに厳しい状況が続いている中、田村憲司前会長をはじめ、政官民多くの関係者の尽力で、ダンピング受注に一定の歯止めとなる総合評価制度の導入が進められてきた。しかし、総合評価制度導入は手段であって目的ではない。ダンピングが横行し、制度が形骸化したのでは、意味を成さない。制度の目的である品質確保・コストダウン、そして何よりも適正価格での工事契約が実現できるように、今後、制度の適正な運用を実現させていきたい。
―今、危惧されることは
絹川 今、価格競争の激化により、業務単価が崩れ、仕事を請負うため、技能者らが親会社を離れて組織するグループ請負の動きがある。3Kと呼ばれる建設業において、社会保険などの保証がない条件下、労働環境が悪化の一途を辿っている。また技能の継承を担う各専門業者で抱える学校は経営難で閉鎖に追い込まれるなど技能の継承もしにくくなっている。
これが競争社会における世の流れかもしれないが、技能者の労働環境が改善されない限り、品質の確保を図れるはずがない。
―目指すべき適正な運用は
絹川 そもそも日本は、古来より独自の文化風土というものがあって、人々の暮らしが成り立ってきました。日本文化を背景に成長した建設産業のあり方は、過当競争の中、下請に無理を強いて、仕事をするものではないはず。ダンピングは、発注者側のコストダウンの目的を達成しているかもしれないが、実態は業界が疲弊する方向に向かっていくだけで、産業全体としては、産業構造の改善や生産性向上に繋がっていない。
今一度、日本文化に則った継続的な信頼関係を築き、施主、元請、下請らが協力しあうという要素を制度に注入していくことで、「目的」に合った総合評価落札制度の適正な運用が可能であると考える。その手法については多方面にわたる議論と実態の改善が必要であると思う。
―実現に向けた建産連の役割は
絹川 施主、元請、下請の関係を見直す一環として、互いの意見を交換できる場を設けるため、協同して工程管理を進める管理ソフトを現場ごとで提供していけるよう、準備を進めている。
施主、元請、下請も相対する取引先。お互いが管理ソフトを通じて、意見をすりあわす場をもつことが結果的にダンピングを抑えることに繋がる。元請自身がダンピングしようとしても、下請が離れていくという不可抗力が働くことになる。先に義をもてば、後から利がついてくる。「前義後利」という中国の故事がある。建設産業が窮する今こそ相互理解を訴えていきたい。
―ありがとうございました |