建通新聞社(中部)
2009/05/29
【愛知】木曽川導水路 河村市長の撤退表明で3県が「負担増は受け入れられない」
名古屋市の河村たかし市長が木曽川水系導水路事業からの撤退を表明したことを受けて、同事業の関係機関で構成する「木曽川水系連絡導水路事業監理検討会」が27日に開かれた。名古屋市は、国土交通省中部地方整備局、愛知、岐阜、三重の3県、水資源機構に対して状況を説明。撤退を正式決定したわけではなく、事業参画の必要性を改めて検討し夏ごろに結論を出す予定であるとした。これに対して各県は、「名古屋市の判断により3県の負担が増加することは絶対に受け入れられない」とし、今後の名古屋市の意思決定の手順や時期を早急に明らかにするよう要求した。
名古屋市によると、川村市長は国会議員時代から導水路の必要性に疑問を持ち、市長となった現在でも同じ考えであることなどを表明したものであり、名古屋市として導水路事業からの撤退を正式決定したわけではないという。ただ、名古屋市としては今後、導水路事業に参画する必要性を改めて検討し、導水路事業の環境に対する影響についてまとめる「環境レポート」の作成状況に合わせて、夏ごろに結論を出したい考えであることを説明した。
一方、中部地方整備局と水資源機構は、これまで同事業について名古屋市も含む関係者間で検討、合意を重ね、法律に基づいた手続きを踏んで進めてきた経緯をあらためて説明。今後、こうした経緯を踏まえて対応していくことを全員で確認した。
また、会議で各県からは、これまでの経緯を踏まえない、各県から名古屋市長の突然の撤退表明に対して、「極めて遺憾」「大きな犠牲を強いられた旧徳山村民に説明責任を果すべき」と厳しい指摘が相次いだ。少雨化傾向などによる水不足が心配されるなか、水源確保について名古屋市としてどう考えているのか、「互譲の精神」で乗り越えてきた渇水調整についてどう考えているのか回答を求めるとともに、名古屋市の撤退により3県の負担が増えることについて「絶対受け入れられない」と強い姿勢を示した。
各県からの意見・質問内容と導水路事業への参画の必要性について名古屋市は、早急に検討を進めるとした。導水路事業監理検討会は、名古屋市の検討状況に応じて随時開く予定。今回、副知事、副市長レベルの会議を開くことが話し合われたが、具体的な開催時期などが決まらなかった。
水資源機構法では、事業からの撤退する場合の費用負担について一定の規定があるが、実際に事業撤退に至った前例はない。規定によると、事業撤退する者は、残った事業者が被った余分な支出や、採算割れ分を負担することになるほか、「著しい不公平が生じる場合」には、別途の負担金を国土交通大臣が定めることができるという。