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日本工業経済新聞社(群馬)
2025/02/19

【群馬】時間外上限規制・賃上げの状況調査 9割以上が人材確保課題


群馬県建設業協会(青柳剛会長)は19日、「時間外労働のあり方」および「賃上げ」に関するアンケート調査結果を明らかにした。9割以上の企業が人材不足を課題に挙げ、気象条件に左右される屋外作業などを建設業特有の課題と多くの企業が回答。建設業が「一品受注生産」「現地屋外生産」という特殊な産業であることを改めて認識する結果となり、他産業と同じ適用となっている時間外労働上限規制の緩和が必要と指摘、「年720時間」「月45時間超6カ月まで」の規制緩和と「働きたいときに働き、働けるときに働く、柔軟な働き方」を提案した。賃上げについては◇生産性向上のための加速化◇実勢による価格転嫁◇人材確保−の3つの方策を示した。
会見で青柳会長は「足の遅い人を中軸に据えて、じわじわと前に進んでいくことを協会活動の基本に掲げて進めていく中で賃上げや時間外労働の問題が圧力となって業界から退場していくことがあってはならない」と指摘し「先を見るのではなく、常に足の遅い人を見ながら皆で動いていき、地域を守っていくことが大事なことだと考えている」と話した。
「時間外労働のあり方」に関するアンケートは時間外労働上限規制適用から10カ月が経過し、これまでの課題と建設業特有の問題点を把握するため実施。同協会本部会員274社を対象に調査を行い、237社が回答。回答率は86・5%だった。
受注確保以外に直面している課題として92・8%の220社が人材の確保を挙げ、従業員の賃上げ、働き方改革についても約5割の企業が課題と捉えていることが分かった。技術者・技能者の時間外労働を減らせない直接的な原因として75・1%となる178社が工事書類・図面作成などの内業が多いことを指摘。次いで工期が厳しい、夏季の高温・降雪・豪雨の頻発化など気象状況の変化を挙げている。
時間外労働の上限規制を考える上で建設業特有の課題として考慮するべきことという設問には78・5%、186社が屋外作業のため気象に左右され施工ができない日があると回答。次いで◇監理技術者・主任技術者の業務が多岐にわたり業務量が多い=54・4%(129社)◇工事ごとに内容や工期が大きく変化する。同じものが一つもなく検討時間が必要=54%(128社)◇同じ場所の勤務でなく現場で働く。その場所が遠隔地のときもあり通勤時間がかかる=47・3%(112社)−となり、あらためて建設業が「一品受注生産」「現地屋外生産」という特殊な産業であることが浮き彫りとなった。
建設業特有の働き方を考慮した時間外労働に取り組むため、上限規制を緩和できるならどの項目を行うのが良いかという質問には35%となる83社が月45時間を超える時間外労働について6カ月以内という規制を緩和することを挙げた。複数月平均80時間以内の緩和と1カ月100時間未満の緩和を求める声は26・2%、62社から寄せられた。一方で24・5%となる58社が規制緩和は不要と回答したが、全体として緩和を求める意見が多い結果となった。
公共工事における週休2日制について、工期内での週休2日(4週8休)を選択した企業が101社と最も多く、次いで80社が月単位での週休2日(4週8休)を選択した。最も少なかったのは週単位での週休2日(完全土日休み)で、建設業の「一品受注生産」「現地屋外生産」という特殊性を考慮すると、週単位での週休2日(完全土日休み)はあまり望まれていないことが分かった。
「賃上げ」に関するアンケートは地域建設業の実状を調べ、今後賃上げが可能となるような環境整備に向けた取り組みを進めていくため実施。同協会本部会員を対象に調査を行い、86・5%の237社が回答した。
25年度から役員を除いた従業員の月額基本給の賃上げについて、56・1%の133社が賃上げを行うと回答し、未定または検討中とした企業は35・8%となる84社あった。なお、賃上げを行わないと回答した企業は8・2%の20社と少ない結果となった。
賃上げを行うと回答した133社の中で最も多かった賃上げ率は1・5〜2%未満で、25・6%の34社が回答。次いで24・1%の32社が回答した2〜3%未満となった。最も多い賃上げ予定額は5000円〜1万円未満で48・1%の64社、次いで32・3%の43社が回答した1万円〜2万円ということが分かった。
なお、賃上げを行わないと回答した企業の50%が受注額や利益率が伸びていないことを賃上げを行わない理由に挙げた。
今後賃上げを進めていくために望むことについて、最も回答が多かったのが現場管理費・一般管理費等の経費率の引き上げで54・9%、130社が選択した。次いで、49・4%の117社が選択した公共事業予算の増額確保と地方への重点配分となった。