静岡県は、富士山富士宮口五合目来訪者施設の整備について、コンストラクション・マネジメント(CM)方式を採用し、設計・施工一括で発注することを検討している。これまで検討していたECI方式での実施を変更し、基本設計の段階から施工者の意見を反映させることで、事業の確実な実施につなげる。
同施設は、2023年度にECI方式で事業者選定を実施したものの、特殊な立地条件や冬期に施工できないなどで難工事が見込まれるため、事業者が参加を見送り不調となった。その後、建設地の変更や施設内容の見直しをはじめ、受注につながりやすい条件の検討を続けてきた。
事業者へのヒアリングで、基本設計の段階で施工者の意見や提案が取り入れられないと受注につながりにくいことが分かったため、設計・施工一括での発注を検討することとなった。
一方、県の建設関連工事では設計・施工一括での実績がほぼないという。このためCM方式を採用し、専門的な知識や知見を持つ事業者に全体的なマネジメントを支援してもらう。
CM方式とは、発注者を補助する立場のコンストラクション・マネージャーを設置し、設計や工事発注方式の検討、工程管理、コスト管理などのマネジメント業務の一部または全部を担当させるもの。
4月には、CM業務の受託者選定手続きに着手し、25年度内に設計や工事の発注方式を確定させる予定。28年度の完成を目指し、27年度には設計に取り掛かりたい考えだ。25年度にはCM方式の採用の関連事業費として3250万円を計上した。
五合目施設には、災害時の避難や高度順応、登山者への情報提供、入山規制などの機能を持たせる。当初の計画では、プレキャストコンクリート造4階建て延べ約1600平方bの施設で、事業費は39億3000万円を想定していた。教護室や宿泊室に約60平方b、展示・休憩スペースに約460平方bの床面積の他、600人程度が収容可能な避難スペースが必要とした。今後、必要な機能を確保しつつ、実現可能な施工方法や規模、構造へと見直す。
建設地は、21年度に焼失した旧レストハウス跡地の敷地2849平方b。当初の計画ではこの東側に整備する予定だったが、落石防止施設が設置されていることや、比較的小規模な造成工事で済むことなどを理由に建設地を変更した。
五合目来訪者施設は、主に高山病のリスクを下げる役割がある。高山病を防ぐには、高度の高い場所で1時間ほど待機する「高度順応」が必要とされている。現状で五合目には数十人分の収納スペースを確保した仮設の建物しかないため、登山者の安全のために早期の施設整備が求められている。
提供:建通新聞社