北海道建設新聞社
2025/02/17
【北海道】道が25年度予算案を発表/一般会計1%増の3兆504億円
道は13日、2025年度予算案を発表した。一般会計は前年度当初比1%増の3兆504億6579万7000円。このうち公共事業などの投資的経費は0・1%減の3643億8975万円だったが、特別会計も含めると0・2%増の3746億9045万円となった。主な建設事業では、和訓辺上渚滑線改築(紋別市)、尻別川蘭越・ニセコ工区(蘭越町、ニセコ町)などに新規着手する見込みだ。(関連記事、関連表4、5面に)
特別会計は前年度当初を0・9%上回る1兆567億5669万2000円。一般会計を合わせた総額も4兆1072億2248万9000円で0・9%増加した。
一般会計の投資的経費は、特別対策事業費が1%増の292億円、公共関連単独事業費が3・6%増の143億円、施設等建設事業費が6・8%増の365億円といずれもプラスとなった。一方、補助事業費等は1702億円で1・2%、社会資本整備総合交付金事業は206億円で0・2%それぞれ減少している。
前年度の国補正を含めた実執行分で見ると、国直轄事業負担金、社会資本整備総合交付金事業以外の区分が全て増加。補助事業費等は0・7%増の2971億円で、社会資本整備総合交付金事業は0・1%減の435億円だった。
災害復旧費は前年度当初比4・8%増の29億8401万円。うち過去の災害に対応する過年分は12億578万円、25年度災害に備えた現年分は17億7823万円に上る。
主な建設事業を見ると、和訓辺上渚滑線改築に着手する予定。渚滑川をまたぐ記念橋を現橋上流側に架け換える計画で、橋長183m、幅員8・2m、上部は4径間鋼製連続板桁、下部は逆T式の橋脚3基と橋台2基を想定する。上立香橋を架け換える滝之町伊達線改築(壮瞥町)、延長1570mなどを整備する北見常呂線改築(北見市)も新規事業化を見込んでいる。
継続では、債務負担行為を設定している小樽環状線最上トンネル新設、恵庭栗山線馬追橋などが最終年度、奥尻島線力沢大橋上部、大岸礼文停線美の岬トンネル法面対策などが施工2年目となる。新たに債務負担行為を設定する事業はない。
その他の主な事業では、鷹栖東神楽線旭川東神楽道路で路盤・舗装、環境調査など、幕別帯広芽室線で路盤・舗装、環境調査、地下水調査などを進める。
街路は、3・4・111基線通跨線橋整備(恵庭市)、3・2・401花川通新設(石狩市)の事業完了を目指すほか、3・3・20永山東光線跨線橋整備(旭川市)を推進。新釧路川に架かる長大橋を新設する3・3・26愛国北園通整備(釧路市)、3・4・4港湾通無電柱化(増毛町)は新規着工を予定している。
河川は、尻別川蘭越・ニセコ工区の新規着手を計画。無加川(北見市)、釧路川(釧路市、釧路町)、雨竜川(幌加内町)などは継続整備する。砂防は新規が呼人川砂防(網走市)、継続が富良野川火山砂防2号堰堤(上富良野町)、駒ケ岳火山砂防砂原町工区(森町)、ペケレベツ川砂防(清水町)などとなっている。
海岸事業は、東蓬莱海岸メンテナンス事業(新ひだか町)、虻田海岸高潮対策(洞爺湖町)の新規着手を見込む。継続では浜中海岸(浜中町)、大津海岸(豊頃町)の高潮対策、野付崎海岸浸食対策(別海町、標津町)などを推進する。
建築関係を見ると、鹿追町内でゼロカーボン道営住宅の第1弾となる仮称しかおいゼロカーボンモデル団地に着工する見通し。基本・実施設計はカミトリュウジ建築設計に依頼した。ZEB Ready認証を取得した中標津合同庁舎は改築2年目を迎え、25年度内の供用開始を目指す。道民活動センター改修は、受変電設備と非常用発電設備を継続するほか、空調設備に新規着手。設計では外壁改修などの実施設計を手掛ける。
13日の定例記者会見で鈴木直道知事は「経済、食料安全保障をはじめとする北海道に求められる役割など、ある意味でのチャンスをしっかりと生かしていくために取り組んでいく、このことが予算編成上の重要なポイントになった」と強調。
国のGX2040ビジョン案で産業集積を加速させる方針が示され、新たな食料・農業・農村基本計画骨子案で道が重点地域に位置付けられたことに触れ、「北海道の将来を見据え成長産業分野を後押しし、食料供給基地としての役割も果たす。これにより経済、食料安全保障を担う北海道の価値を一層押し上げていく」と意欲的に語った。
予算案は19日開会の第1回定例議会に提出する。
■解説/事業量確保も業者利益減少
道の2025年度一般会計予算案は3兆504億円と5年連続で3兆円を上回った。しかし収支不足を補うため財政調整基金から120億円を取り崩すなど財政状況は依然として厳しい。そんな中でも投資的経費は前年度当初比0・1%減と横ばい。防災・減災、国土強靱化のための5カ年加速化対策などを盛り込む24年度補正も合わせると0・7%増と事業量は減っていないように見える。ただし資材価格や人件費の高騰が続く。事業者の手元に残る利益は確実に目減りしている。
予算案の重点施策を見ると、国が24年度内に食料・農業・農村基本計画を策定することもあり、共同利用施設の再編集約支援など食料の安定生産・供給につながる施策が数多く盛り込まれた。観光需要の創出、観光客の地域偏在解消対策など観光関連の施策も目立つ。外国人材活用促進やものづくり産業分野の人材確保支援など各産業での人手不足解消に向け、人づくりに注力する姿勢を強く打ち出しているのも特徴となっている。
農業振興は食料安全保障の観点からも重要性は高く、インバウンドが堅調な観光は、さらなる需要拡大や受け入れ環境整備が必要となる。生産基盤整備や物流・人流を支える交通ネットワーク構築は産業発展に欠かせない要素であり、インフラ整備をさまざまな施策と並行しながら進めなければ最大限の効果を生み出すことは難しく、着実な推進が求められる。
業種に限らず人手不足も深刻だ。各企業は業務効率化で無駄をなくし、生産性の向上を図り、働き方改革で就業環境を改善するなど自助努力を続けるが人材確保は困難を極めている。予算案では就労促進や働き手の掘り起こしなどの施策が並ぶが、人件費に充てられる利益を生み出せなければ働き手の確保にはつながらないだろう。
国土強靱化や災害対応、基盤整備を担う建設産業も担い手不足にあえいでいる。このまま入職者が少ない状況が続けば、経営に来す支障と地域に与える影響は計り知れない。道には事業量の安定確保はもちろん、どのように企業を存続させていくかという視点が求められる。(建設・行政部 古関暁典記者)