東日本建設業保証富山支店は、2024年度第3回「建設業景況調査」の実施結果をまとめた。
同調査の回答結果から景気の好転は見られなかったものの、受注総額と民間工事の受注において、過去10年で最も良い傾向を示したほか、短期借入金利の上昇傾向が一層強まったことにより、こちらも過去10年で最も高い数値となった。
景況調査は建設企業の景気動向を、総合的に迅速かつ的確に把握することを目的に実施しているもの。
経営動向(業況等、受注、資金繰り、金融、資材、労務、収益)と自社の業況、経営上の問題点について、毎年3、6、9、12月にそれぞれ郵送でアンケート調査を行っている。調査に際しては、同社と取引関係のある建設企業から、地区別と業種別、規模別の分布状況を考慮。経営動向を反映するに足りると認められる企業を対象とし、原則として固定している。
今回の回答企業は62社。項目ごとに24年10月から12月(第3四半期)の今期実績、1月から3月までの来期見通しを算出した。
項目別のB・S・I(景況判断指数)値を見ると、業況等の「地元建設業界の景気」は今期、悪い傾向がやや強まった。来期も概ね同様の傾向となる見通しで、景気の先行きに悲観的な回答を寄せる企業が多かった。
今期の「受注総額」は、減少傾向が顕著に弱まったことで、B・S・I値マイナス1・0と過去10年で最も高い数値となった。前期比では官公庁工事、民間工事ともに減少傾向が弱まった。特に民間工事では、B・S・I値0・5とプラスに転じ、過去10年で最高の数値を示した。
来期の受注総額は、減少傾向が強まる見込み。官公庁工事は今期と同じ基調、民間工事では減少傾向が著しく強まる方向だ。
「資金繰り」は今期、容易な傾向から厳しい傾向に転じた。来期も今期と同様の傾向が続くもよう。
今期の「金融」は、銀行等貸出傾向で容易な傾向が続いている。短期借入金は増加傾向が若干強まっており、短期借入金利は上昇傾向が相当強まり、B・S・I値13・0は、過去10年間で最も高い水準となった。来期は銀行等貸出傾向、短期借入金、短期借入金利いずれも今期と同じ傾向が続く見込み。
また、「資材」は今期、資材の調達で困難な傾向が続いており、資材価格は上昇傾向がかなり弱まった。来期は、資材の調達で困難な傾向が強まるとともに、資材価格も上昇傾向が強まる方向。
今期の「労務」は、建設労働者の確保で困難な傾向が続いているものの、賃金は上昇傾向が弱まった。来期は労働者の確保、賃金ともに今期と概ね同様の基調が続く見込み。
「収益」は今期、減少傾向が続いている。減少理由では、『完成工事高の減少』が依然トップとなったが、前回調査で2位だった『資材価格の上昇』が、『下請代金の上昇』と並び3位、『人件費の上昇』が前回の3位から2位にランクアップした。来期の収益は、減少傾向がやや強まるもようだ。
なお、自社の業況は今期、良い傾向から悪い傾向に転じており、来期は悪い傾向が一層強まる方向。
今期の経営上の問題点は、『人手不足』が圧倒的なウエイトで依然最多。順位の変動はなく以下、『従業員の高齢化』、『下請の確保難』、『受注の減少』、『資材価格の上昇』の順となった。
詳細は表を参照。