国土交通省関東地方整備局は多摩川水系河川整備計画の変更に向けた目標案などをまとめた。気候変動により予測される降雨量の増加などを考慮して、基準地点の石原水位観測所(東京都調布市、左岸27・6`)で1年間に洪水が発生する確率(年超過確率)を現行の20分の1から「70分の1〜80分の1」に見直すとともに、1秒当たりの目標流量を4500立方bから7200立方bに引き上げる。既存計画では機能が不足する施設もあり、これらをベースに堤防の整備や高潮対策などを進めて治水安全度を高める。2024年度中に河川整備計画の変更原案をまとめ、25年度に関係都県知事の意見聴取などを実施した上で変更する。
河川整備計画では中長期の河川整備基本方針に基づいて、おおむね30年間の具体的な整備内容などを定める。多摩川水系は23年3月に河川整備基本方針を変更し、基準地点の年超過確率を変更前と同じ200分の1としながらも、1秒当たりの計画高水ピーク流量については6500立方bから7400立方bに引き上げていた。
目標案の他に築堤、高規格堤防、河道掘削、高潮対策などの整備メニューも例示した。
このうち高規格堤防では、右岸側が国道1号多摩川大橋付近(川崎市幸区)〜多摩運河付近(川崎市幸区)の延長15・3`区間を整備区間と位置づけ、民間事業(開発、土地区画整理事業)や川崎市の事業(船着場、歩道)と一体的に整備する。高潮対策では、沿川に川崎港と羽田空港の位置する区間(左岸0・0〜0・8`、右岸0・0〜0・6`)で波の打ち上げ高が計画堤防高を上回るため、低水路に消波工を設けるとした。
25年度が最終年度となる多摩川緊急治水対策プロジェクト(19年度〜)の未完了事業なども繰り越して継続する考え。
多摩川流域の浸水想定区域内の人口は約198万人に上り、氾濫すると約130平方`が浸水して約27兆円の甚大な被害が生じる。19年の台風10号では、多摩川で戦後以降最大の年最大流量(ダムなし、氾濫なしの場合の洪水流量)を記録するなど、激甚化する自然災害への対応が急務となっている。
提供:建通新聞社