名古屋市住宅都市局は12月20日、熱田神宮周辺のまちづくりで、2025年度から再開発実施方針を作成するとともに、地権者の合意形成を進めていく考えを示した。今後の具体的なスケジュールは未定としているものの、他の一般的な再開発事業では、地権者合意形成に3年、都市計画手続き等に3年、設計・工事を含めて全体で10年程度必要との認識を示している。並行して、観光まちづくりとエリアマネジメントを展開していくための官民連携組織(熱田神宮エリアプラットフォーム(仮称))を本年度内に設置し、同組織でまちづくり方針(まちづくり未来ビジョン)をまとめる考え。金山駅周辺まちづくりとともに、再開発具体化に向けて動き出したといえそうだ。
将来のまちのイメージとしては、「多彩で便利な都市機能が集積する駅前空間として再開発が進み、国内外からの来訪者、地域住民によるにぎわいがあふれるまち」、「オープンスペースではさまざまなイベントや地域活動などが開催され、人々の多様な交流・出会いが創出するまち」の2点を提示。
整備の方向性として、駅周辺の再開発の展開による交流拠点の形成と、多様な交流を促進する仕掛けづくりを行っていく考えを示した。交流拠点の形成では、熱田ならではの雰囲気を感じる駅前商業施設等の整備、耐震性能の確保、防災機能の整備、居心地の良い多機能な公開空地等の整備、安心で快適な歩行者動線の確保を挙げている。地区に求められる主な導入機能には、ウオーカブルな都市空間を創出する低層部店舗施設と広場、熱田神宮駅前の観光拠点化につながる観光バス乗降場・待機場、鉄道との乗り換えをスムーズ化する駅前ロータリー、近隣住民の利便性向上につながる生活支援施設を挙げている。
再開発に向けて本年度、概略プランや収支計画作成を通じて、事業性を把握している。今後、再開発実施方針を作成するとともに、権利者の合意形成を短期、都市計画や事業認可などの事業化手続きを中期で進める見通しを示した。
熱田神宮エリアプラットフォームは、市やまちづくり団体、企業・団体などが構成員となる組織を想定している。観光まちづくり推進とエリアマネジメントを展開していく。観光まちづくりは、まちづくり未来ビジョンを実現するための具体的な取り組み内容、実施主体を決めてアクション・プログラムを策定、取り組みを実施していく。エリアマネジメントでは組織の自立を市が支援、組織の自走化を促進していくとしている。
熱田神宮駅周辺では、熱田区役所南側にある市有地(約0・72f)が未利用の状態が長期間続いている他、商店街の衰退による地区の活力低下、所有者不明土地・建物の増に伴う管理不全物件の増加、木造家屋の老朽化の進展による災害時のリスク増大、大津通があることで熱田神宮との回遊性が不足しているなどの課題を抱えている。まちづくり団体などは連名で、市街地再開発事業の早期実現を求める要望書を23年10月に提出するなど、再開発の機運が高まっている。
提供:建通新聞社