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建設経済新聞社
2024/12/20

【京都】再評価の由良川直轄河川改修事業で整備 福知山の岩沢堤の堤防強化 綾部の栗村井堰は改築計画

 近畿地方整備局は、事業評価監視委員会で由良川直轄河川改修事業を再評価。その中で当面の河川整備内容として、福知山市街地の左岸堤防(岩沢堤)の歴史的景観を維持した現堤防の強化及び浸透対策、中流部の綾部市の栗村井堰改築などを挙げた。
 令和6年度第3回近畿地方整備局事業評価監視委員会が17日に開催され、京都関係は由良川直轄河川改修事業について、社会経済情勢の急激な変化(事業費の増加等)により再評価の実施の必要性が生じた事業として、再評価を行った。
 前回事業評価時点(令和3年)からの主な変化は、対策内容の変更(事業費の増加)と費用便益比(B/C)の見直し。
 対策内容としては、歴史、景観、文化的価値を有する岩沢堤について、関係機関との調整が図られ対策内容を変更。その他事業箇所においても事業進捗に伴い対策内容を変更。
 B/Cの見直しは、▽気候変動に伴う外力の見直しによる総便益の増加(B)▽各種資産評価単価更新による評価額の増加(B)▽関係機関との協議・調整等に伴う対策内容変更による総費用の増加(C)▽建設費(労務や資材単価等)に関わる物価の上昇による増加(C)等。
 事業全体のB/Cは、Bが@便益1兆9281億円A残存価値12億円(総便益@+A1兆9293億円)、CがB建設費1542億円C維持管理費193億円(総費用B+C1735億円)で11・1と算出。
 これを残事業でみると、Bが@便益6626億円A残存価値3億円(総便益@+A6629億円)、CがB建設費146億円C維持管理費46億円(総費用B+C192億円)で34・5と算出した。
 事業評価監視委は「前回の再評価以降も事業の必要性は変わっていないことから、引き続き『事業を継続』することが妥当である」と判断した。
      ◇       由良川の上流部は勾配が急で流れが速いが、福知山を流れる中下流部では勾配が緩くなるため流れが遅くなり、氾濫が生じやすいこと等から、昭和22年に直轄事業として由良川の本格的な改修工事を開始。昭和41年に由良川水系工事実施基本計画を策定した。その後、平成11年に由良川水系河川整備基本方針、平成15年に由良川水系河川整備計画を策定。平成16年台風23号の被害等を踏まえ、さらなる治水安全度の向上を目指し、平成25年に新たな河川整備計画を策定(変更)した。気候変動の影響を考慮した基本高水流量と、河道と洪水調節施設等への配分を見直し、令和5年に新たな河川整備基本方針を策定(変更)した。
 河川整備の概要(治水計画の考え方)によると、由良川は上流部に府管理区間があり、中流部は資産が集中する市街地を抱え、下流部は平地が少ない山間地を流れており、堤防からの越水と家屋浸水を防止するため、中流部は連続堤の整備や河道掘削、排水機場の増強等、下流部は輪中堤・宅地嵩上げ等を実施。下流部は連続堤防による整備では沿川の土地利用に大きな影響を与えるとともに、効果発現までに長い年月と多大な費用が必要となるため、農地等の浸水は許容し、住家を輪中堤や宅地嵩上げにより効率的に洪水から防御する土地利用一体型水防災対策を実施。
 第1段階(平成15〜24年度)は▽旧河川整備計画で計画された対策のうち下流部では平成16年洪水で特に被害の大きかった地区を対象に緊急水防災対策を実施。第2段階(平成25〜令和3年度)は▽下流部では緊急水防災対策が平成28年3月に完了▽現河川整備計画で計画された対策のうち、平成16年洪水と平成25年洪水の両方で被害が大きかった地区を対象に緊急治水対策を実施し、令和3年度末に下流部の輪中堤及び中流部の連続堤防、河道掘削等の整備が完了▽平成26年洪水で福知山市街地において被害が大きかった地区を対象に床上浸水対策を実施し、令和2年5月に内水対策が概ね完了。第3段階(令和4〜10年度)は▽上記(緊急治水対策)以外の無堤地区で堤防整備(下流部は輪中堤、中流部は連続堤)するとともに、資産が集中する福知山市街地の堤防強化を実施▽下流部では平成29年洪水、平成30年洪水で被害のあった地区を対象に内水対策を実施。中流部において中下流(緊急治水対策)の整備を踏まえ、上流に向かって、堰の改築と河道掘削等を実施。第4段階(令和11〜25年度)は▽中流部において、さらに堰より上流に向かって河道掘削等を実施。
 前回事業評価以降に進捗した主な整備内容は▽中流部で洪水の流下断面が不足している箇所について、河積確保のための河道掘削を実施中▽令和5年度に栗町地区で河道掘削を実施済み▽下流部においては、住家を輪中堤や宅地嵩上げにより効率的に防御する水防災対策を、計画高水位以下に家屋が存在する全地区を対象に実施中▽宅地嵩上げは、既に完了しており、由良地区の輪中堤整備は令和5年度までに一部が完成。
 当面の河川整備内容は、▽由良・石浦地区、高畑地区、並松地区は、堤防未整備区間であり、計画高水位以下の家屋が存在することから堤防整備を実施▽福知山市街地の左岸堤防(岩沢堤)は、現在の歴史的景観を維持した現堤防の強化及び浸透対策による堤防強化対策を実施▽志高地区、中流部は、洪水の流下断面が不足していることから、河積確保のための河道掘削を実施▽横断工作物である中流部の栗村井堰によって、洪水の流下断面が不足していることから、河積確保のための堰改築を実施。
 このうち、「岩沢堤」やその一画にある「明智藪」は、天正8年(1580年)に丹波地方を平定した明智光秀が、城下町を築くため、福知山城から北西に向かって築いたことが始まりといわれている。昭和2年の北丹後地震の災害復旧として嵩上げ補強する際、査定官であった岩沢忠恭氏にちなんで「岩沢堤」と呼び、現在も「大堤防まつり」につながる等親しまれている。「明智藪」は由良川の代表的な自然景観の一つであり、サギ類のコロニーとなっている。一方、岩沢堤背後の堤内地では洪水時に漏水被害の実績があり、浸透に対する堤防強化を行う必要がある。こうしたことを踏まえ、歴史、景観、文化的価値に配慮し、関係機関等と「岩沢堤」の対策内容を調整した結果、現況の堤防を極力活かしつつ、より安全な堤防となるよう堤防強化を実施することとし、対策内容を決定した。
 なお近畿地整福知山河川国道事務所は、栗村井堰改築予備設計他業務を簡易公募型プロポーザル方式で令和5年1月に公告。その後、建設技術研究所大阪本社(大阪市中央区)を選定し、随意契約した。
 由良川48・6q付近に位置する栗村井堰の改築予備設計及びそれに必要な地質調査、測量を行うもので、業務内容は測量業務一式、地質調査一式、堰改築予備設計一式。履行場所は綾部市位田町地先。