愛媛大学は12月16日、2026年度に工学部の社会デザインコースを建築・社会デザインコースに改称するとともに、1級建築士の受験資格取得に対応したカリキュラムを導入すると発表した。愛媛県内に建築学を学べる大学ができることで、県内高校生の県外への進学に歯止めをかけるとともに、建築設計だけでなく、トータルな空間デザイン能力を有し、総合的なまちづくり・地域づくり、環境づくりができる人材の育成を目指す。
大学によると、現在の社会デザインコースは11年度に設置され、文理融合のカリキュラムを提供してきたが、近年の総合的なまちづくりや空間デザインの要請に対応するため、建築系の内容を強化し、1級建築士の受験資格にも対応するカリキュラムを導入することにした。愛媛県や建築系関連団体の強い要望も後押しした格好だ。
新コースは26年度の入学生から適用され、定員を25人から30人に増加する。建築系の科目を新設し、デザイン系科目も充実させる。今後はカリキュラムやシラバス(授業計画)の具体化、教員の採用、1級建築士受験資格の申請、高校への説明会などを進めていく。また新規に教員3人を採用し、業界団体の関係者などにも非常勤講師として協力を仰ぐことにしている。
16日に同大学本部で説明会があり、仁科弘重学長は「一度県外に出てしまうと県内に就職に戻ってくることが少ないというデータがある。この改革により、総合的なまちづくりや空間デザインに対応できる技術者を養成し、地域の発展に貢献するとともに、卒業生が地域で活躍することを期待している」などとあいさつ。また森脇亮工学部長も「工学部全体のデザイン教育の充実化につながり、科学、技術、工学、芸術、数学を横断的に学ぶSTEAM教育の強化にもなる」と大学にとってのメリットを強調し、開設に向けて着実に準備を進めていく考えを示した。
説明会に列席した愛媛県の吉良美知宏土木部長は、県内での建築学習機会の創出と高度な研究機関の設置への期待を、続いて県建設業協会の松山清建築部会長が県内建築教育の核となる場の誕生、産学官連携の進展、建築技術者の確保という三つの期待を表明した。また県建築士会の花岡直樹副会長は愛媛を愛する人材育成の重要性を、最後に県建築士事務所協会の烏谷陽一郎会長が県の建築の最終砦として、他県に頼らずに、共に実験や学びを行い、最終結論を出せる機関としての期待を寄せた。
提供:
建通新聞社