「コンクリート構造物は生き物であり、人間の生命と財産を守り文化を創造するのが建設(土木・建築)の使命だ。この道一筋で次の世代には生きがいを持ってほしい」と語るのは、2024年度の新潟県知事表彰に輝いた元新潟県コンクリート診断士会長、元新潟県建築住宅センター理事で新潟工科大学名誉教授の地濃茂雄氏。
新潟県内でも甚大な被害を及ぼした能登半島地震を振り返りながら、「平常な毎日は当たり前ではない。これを機会に地震(液状化、地盤沈下対策など)といった自然災害からの復旧・復興を支えているのは建設業界だということを知ってもらいたい」と呼び掛ける。自然災害の多い国土および県土、そしてコンクリートは生き物であると重ねて強調した上で、「人間と一緒で1つとして同じコンクリート構造物はない。建設の本質を広めていきたい」と話し、業界のさらなる発展を後押しする。
インフラ老朽化など課題が山積する中、長寿命化対策に向けた建設技術の知識普及活動といった講演会や研修会では講師を務め、「汗する建設現場関係者にエールを送りたい」と目を細める。一方で近年の異常気象、気候変動などを挙げ「答えはないが、今までの仕様は見直すべきだ」と問題提起するとともに、産学官が連携しその課題に立ち向かう必要性を説く。
また、持論として「卵を割らなければオムレツは作れない。書斎のデスクワークではなく、人と自然(現場)を見なければならない。私の書斎は野外」と笑みをこぼす。
ちのう・しげお 1945年新潟市秋葉区(旧新津市)出身。79歳。東京工業大学卒業後、同大助手、福山大学教授、新潟工科大学教授、東京造形大学および新潟大学、新潟県立大学の非常勤講師を歴任。日本建築学会賞、日本建築仕上学会賞、建築技術教育普及センター表彰など数多くの受賞歴がある。