神奈川県が公表した9月分の毎月勤労統計調査(速報)によると、建設業(事業所規模5〜29人)の1カ月当たりの所定外労働時間は14・7時間と前年同月比から29・7%減少した。所定外労働時間の減少幅は調査対象の全15業種中、最も大きく、4月以降、6カ月連続して減っている。ただ、総実労働時間は167・6時間と前年同月から1・6%しか減っておらず、他の産業と比較して最も長い。働き方改革を進める建設業の労働環境の改善はまだ道半ばと言える。
建設業の所定外労働時間は、8月の24・1%減に続いて2カ月連続で2割以上減った。神奈川県統計センターは「所定外労働時間は分母が小さいため、少しの変化でも数字が振れやすい」と言うが、4月以降一貫して減少傾向が続く。
一方、建設業の出勤日数はいまだに多く、1カ月19・7日と全産業で最多となっている。2位は運輸・郵便業の18・8日、3位は製造業の18・2日。建設業の現場でも週休2日制や4週8閉所などに取り組んでいるが、出勤日数は製造業より1・5日、完全週休2日の業種より2・7日多い。
残業・早出・休日出勤など所定外労働時間が減っているのに、建設業が他産業と比べて実労働時間が長いのは、出勤日数に加えて、始業時間が早いことも要因だ。現場が主体の建設業は、終業時間が午後5時台と一般企業と変わらなくても、始業時間が午前8時台の会社が多く、このことが労働時間を押し上げる。建設業の1日の平均所定内労働時間は7・76時間だが、他産業では大半の企業が7・5時間以下となっている。
生産性に課題も給与は高水準
ただ、労働時間の長さが報酬に反映されていることは間違いない。9月の給与額(決まった支給、ボーナスを除く)を見ると、建設業は44万4009円(前年同月比0・2%減)。電気・ガス・熱供給・水道業、学術研修・専門技術サービス業に次ぐ3位となっている。全15業種中11業種が30万円台以下の中、高水準を維持する。
時間外労働の上限規制が適用され、働き方改革元年といわれる建設業だが、労働条件については改善の余地が残る。給与水準を維持しながら生産性を向上させるには、さらに一歩踏み込んだ対策が求められる。
提供:建通新聞社