愛知県は12月9日、名古屋市内で第3回名古屋三河道路有識者委員会(委員長・中村英樹名古屋大学大学院環境学研究科教授)を開き、構想段階評価の最終手続きとして、前回委員会で示したルート帯案のA案(北側ルート)、B案(南側ルート)、C案(現道活用案)の3案のうち、県側が、B案(南側ルート)を定時制・速達性の向上など四つの政策目標で最も優位である案とした評価結果と対応方針(案)を示し委員会に諮った。委員会では、B案のルートは妥当とした一方、対応方針(案)の文案について、自然環境への配慮、渋滞の緩和などの観点に立った修正を求めた。今後、対応方針(案)について必要な修正を加えてまとめる。今回の委員会で、構想段階評価の最終手続きを終え、環境影響評価手続きの準備段階となる環境影響評価配慮書に着手することになる。その後、詳細ルート・構造の検討と都市計画・環境影響評価の手続きを進める手続きとなる。
名古屋三河道路は、知多地域と西三河地域を東西に貫く高規格道路として、2021年3月に国と県の新広域道路交通計画において高規格道路(調査中)に位置付けられた。22年3月に国の名古屋都市圏環状機能検討会で、西知多道路から名豊道路までを優先整備区間に設定、同年4月には重要物流道路にも指定され、22年度から県が概略ルート・構造の検討に着手した。22年12月に名古屋三河道路有識者委員会(以下、委員会)を設置し、構想段階評価手続きに着手し、第2回委員会(23年12月)で、3案のルート帯案を示し比較検討を行い、その後にアンケートなどによる2回目の意見聴取(2〜3月に実施)を実施した。今回の委員会では、意見聴取の結果、対応方針(原案)の検討、自治体(5市2町)への意見照会、対応方針(案)まとめを審議した。
今回、対応方針(案)として示されたルート帯のB案は、起終点間の速達性と沿線の生産拠点へのアクセス性の向上の双方を考慮した自動車専用道ルートで、延長は約20`。ルート整備による短縮時間は25分。3案の中で最も南側に位置し、工業地域など生産拠点へのアクセス向上を図りつつ、名古屋港と国道23号名豊道路の速達性も確保したルート。比較検討のうち、政策目標の産業、渋滞、安全、防災の中で細分化された6項目では、5項目が優位な事項と評価され、特に「工業地域等の生産拠点における物流の効率化」ではアクセス性が向上する生産拠点が最も多く立地していること、「地域の防災性の向上」では、アクセス性が高まる防災拠点等が最も多く立地しているとし、特にこの2項目での優位性が示された。配慮すべき事項(3項目)でも、「生活環境への影響」「景観等への影響」の項目で優位性を示した。想定する事業費用は約3100〜3700億円を見込む。
なお、A案は、起終点間の速達性を重視した最短距離の自動車専用ルートで、延長は約19`。想定する事業費用は約3200〜3800億円を見込む。C案は、コストを抑えながら起終点間の既存ルートの交通容量を拡大し、速達性向上を図る現道強化ルートで、延長は約23`。想定する事業費用は約2300〜2800億円を見込む―とした。
ルート帯案のうち、想定するインターチェンジ等の検討位置を見ると、ルート帯は1`の幅で示し、自動車専用道路の西知多道路、知多半島道路、国道23号名豊道路の接続部分はジャンクション形式を想定し、直径2`の青円で示した。このうち、西知多道路と接続する箇所については西知多道路沿いに幅広く考えられることからルート帯を長い円で示した。インターチェンジ(IC)については、6カ所程度を想定し、ルートの端部で、一般道との出入りを確保するため、本道路起終点付近にICを設置する。また、一般国道等の重要な幹線道路となる国道419号、国道366号、名古屋半田線との接続性を確保するためにICを設置する。政策目標として掲げた境川、衣浦港周辺の交通混雑を緩和させるため、境川東側の名古屋碧南線にICを設置する。また、国道366号の付近については、浸水想定区域に位置すること、また、JR武豊線が東側の市街地と分断されているなどの土地利用状況を踏まえて、渋滞と防災の観点から機能分担としての内陸側の東浦名古屋線付近にもICを設けることを検討する必要性を示した。国道366号のIC検討位置については、長細い円で表現しており、2カ所を設置する場合にフルICとハーフICの組み合わせの可能性も示した。
提供:建通新聞社