名古屋港管理組合は、設備や機器の老朽化が進行している、名古屋港水族館の機能向上に向けた基本構想素案をまとめた。現施設を活用した上で、新たな展示コンセプトに「気候変動」の視点を取り入れる考えだ。施設機能では、館内の混雑緩和をはじめ、飼育面積や室内飲食スペースの確保といったさまざまな課題を解消するため、しおかぜ広場敷地を有効活用する方針を示した。方策実現に当たっては、民間活力の導入も含めて幅広く検討していく考え。
国内最大のメインプール(約1万3400d)と約3000人収容のスタジアムが特徴の同水族館は、海遊館(大阪府)、美ら海水族館(沖縄県)と入館者数を競う人気施設。
鉄骨鉄筋コンクリート造で、全体延べ床面積は約4万1800平方b(北館4階建て、南館3階建て)。展示生物は、南館は約500種・約5万点、北館は4種・20頭。開館は南館が1992年、北館は2001年。
設備の経年劣化・老朽化対策を行う必要がある他、飼育員の職場環境改善、館内の混雑緩和、通路の安全対策、アニマルウェルフェアの充実といった改善が求められている。また、平日や冬季の入館者の増加策や維持管理の合理化、ガーデンふ頭再開発との連携といった運営の課題がある。
構想では、課題解決を図るべきエリアは、南館の2階(日本の海)と3階(南極エリア)、北館(2階水中観覧席、シャチ・イルカ・ベルーガプール)、水族館全体(雨天時飲食スペース、環境教育スペースなど)の4つを挙げた。
課題解決では、しおかぜ広場を有効活用する。同広場に、ペンギン飼育展示、繁殖・研究エリアを移設する。また、同広場を全天候型の休憩や飲食を楽しむエリア、新たな出入り口の設置や南極観測船ふじなどの展示を通じてガーデンふ頭全体との新しい回遊性となるエリアとする考え。
ペンギンの飼育展示等機能の移設により、南極エリアは学習体験機能を拡充。南極を通じて地球環境を学ぶエリアを充実させる。
日本の海は、陳腐化した水槽の集約を通じて、通路の拡幅などを実施。十分な観覧空間を確保する、また、野生生物の保全や地球環境の保全の大切さを感じるための学習の起点となる空間とする。
水中観覧席は、休憩空間を併設するなどして、くつろげる空間づくりを目指す考え。また、居心地の良い空間の中で、水族館での繁殖・研究の取り組みを紹介する展示を行う。シャチ・イルカ・ベルーガプールは、行動展示の要素を取り入れ、生態などをより効果的に観覧できるようにする。
その他、取水排水施設やろ過循環設備、熱源設備など、飼育展示するために不可欠な共通基幹設備をはじめとする、老朽化設備を更新する。また、ニーズにあったトイレや授乳室の更新、分かりやすい館内サインへの統一などにも取り組む。
展示・空間演出では、間近で観察、標本や模型などで楽しく学べる展示、五感に訴えかけ没入感に浸れる独特の空間、居心地の良い空間・演出、最新デジタル・多言語化、気候変動・カーボンニュートラル・教育的取り組みを啓発する展示・空間づくりを検討するとした。
提供:建通新聞社