神奈川県警察本部は、2023年度に発注した工事の落札状況について、32件中15件と半数近くが入札不成立だったことを明らかにした。不成立の内訳は、入札参加者全員が予定価格を超過した、または失格となった案件が11件、応札者がなかった案件が4件だった。
入札不成立となった工事種別ごとの件数は、建築一式が7件、管工事が2件、機械器具設置工事が2件、解体工事が3件、消防施設工事が1件だった。
神奈川県議会第3回定例会の決算特別委員会で、田中信次議員(自民党、横浜市泉区)が神奈川県警の入札執行状況について質問。「入札不成立が続くと庁舎の老朽化が進み、災害発生時には使用できなくなる恐れもある。不成立の件数を1件でも少なくすることが必要だ」と訴えた。
田中議員は、「県警は県の部局の中でも特に入札不成立が多い」と指摘。不成立が多くなっている理由について尋ねた。海野真一施設課長が答弁に立ち、「警察施設は24時間365日業務を実施しており、建築工事の中でも厳しい施工条件」が要因の一つだと述べた。また、「特殊性が高い留置施設や取調室、当直室など小規模の部屋が多く、一般的な事務所建築とは異なる」とし、警察庁舎の特殊性も少なからず入札結果に影響しているとの認識を示した。
原則として県警察の工事の積算は国・県基準に準拠する。特殊性の高い品目とその査定率に関しては、警察本部で独自に定めて積算に反映させている。
海野施設課長は、入札不成立への対策として「対象工事が標準的な積算基準に見合わない場合には、特殊品目の対象拡大やメーカーへのヒアリングを行い、業者見積もりに対する査定率の引き上げなど実勢価格を反映させる」とし、積算方法の柔軟な運用を実施する方針を示した。
答弁を受け、田中議員は「入札不成立は警察本部の施設整備が滞る他、設計額の再積算や入札手続きなど職員の事務負担の増加にもつながり、県民にとっても県警にとってもメリットがない。入札不成立となる案件が1件でも少なくなるよう、対策に取り組んでほしい」と改めて要望した。
23年度に入札不成立となった案件には多摩警察署増築工事も含まれており、工種ごとに分けて行った3度目の入札も建築工事がこのほど不調となった。
提供:建通新聞社