県土木交通部と県建設業協会による意見交換会が18日、滋賀県建設会館(大津市におの浜)で開催され、県内建設業の振興―など業界の抱える課題7項目について認識を共有した。
この日は、県土木交通部から波多野真樹部長、理事ら10名、協会から奥田克実会長をはじめ副会長、支部長ら18名が出席。
冒頭、波多野部長は「県民を守るためには様々な観点で皆様の協力は必須。今後も躍動して頂くために、地域建設業者が活躍できる場をしっかりと確保し、業界が抱えている問題を共に解決していきたい」と前置きした上で「本日は皆様の声をしっかりと受け止め、より良い現場環境構築の足掛かりとしたい」と挨拶。奥田会長は「我々も社会インフラの担い手として、地域の守り手として県とのより一層の協力体制を深めたい」とこれに応えるとともに「今日の意見交換では地元建設業界の生の声を届けたいと思っております。強靭な県土形成に向けぜひ前向きな協議となりますようお願いします」と語り、意見交換会の意義を強調した。
質疑では、協会側が@県内建設業の推進A県下における地域格差のない発注BPFI事業等大型工事の発注C調査基準価格・最低制限価格の設定範囲における上限の引き上げD設計・積算に関する事項E入札・契約に関する事項F契約関係や提出書類等の電子化の促進―以上7項目について具体的な事例も含めて改善・協力を求めた。
県土木交通部と県建設業協会による意見交換会の主な内容は次の通り。
@県内建設業の推進
県内建設業が地域防災力を維持し、その役割を果たしていくためには何よりも経営の安定化が重要であり、そのためには安定的・持続的な事業量の確保と適正な利潤が確保できる入札契約制度の改善が必要である。ついては県政において更なる県内建設業の振興策を講じて貰きたいと、協会側は要望。「必要な事業はしっかりと予算化し、発注量の確保を図りながら、切れ目のない発注を心掛けたい」と回答。
A県下における地域格差のない発注
受注機会の偏りを緩和する施策を講じていただいているが、各出先機関においても引き続き各管内の格付企業が平等に入札参加機会が得られる発注を要求。県は、国の補正や国スポといったことで工事量の隔たりが生じていることは把握している。そういった状態を是正するために庁内で協議を進めていくと返答した。
BPFI事業等大型工事の発注
滋賀県では大型工事の事業規模が一定以上の場合、どのような性格を持つ施設であっても、「滋賀県PPP/PFI手法導入優先的検討方針」に基づき、その導入の可能性について検討されているが、そもそもPFI手法を優先的に検討することなく、当該事業がPFI事業としての適否について十分に検討のうえ、実行するよう引き続き土木交通部より関係部局に働きかけをお願いしたいとの要望に対しては、「施設の特性と財政状況をしっかりと把握したうえで、より良い制度となるよう全庁で協議したい」とした。
C調査基準価格・最低制限価格の設定範囲における上限の引き上げ
建設業の営業利益率は他産業に比し、かなり低い水準である。県内建設企業においては、その推移は全国水準(建設業・資本金1億円未満)より低く、大変厳しい経営状態が続いている。現在、滋賀県の調査基準価格および最低制限価格の設定範囲は中央公契連モデルに基づく予定価格の75%〜92%の範囲で設定されているが、健全な企業経営が可能な利益が得られ、担い手が確保、育成できるよう設定範囲の上限を中央公契連モデル以上の引き上げ設定を求めたところ、各種制度に調整の余地がないか調査した上で、建設業者の皆様の負担軽減を図れるよう、問題に対する正しい答えを導き出したい、と考えを示した。
D設計・積算に関する事項
現場環境改善費について、大型の工事には計上されているが5000万円から1億円の工事で半分程度、5000万円以下に限ってはほぼ計上されていないのが現状である。近年では建設混合廃棄物の縮減や廃棄物の分別やリサイクルなど環境改善への取組みは多様化している。CO2の排出削減やカーボンニュートラルへの取組みは環境負荷の低減でもあり、規模の大小を問わず工事従事者が関心を持ち、現場環境改善への取り組みを更に推進するためにも、全ての工事について環境改善費の計上を要望した際は、「国基準で算出しているため県判断での判断は現状難しい。しかしながら、別観点で問題解消が図れないか模索したいと思っている」と解決策を話した。
E入札・契約に関する事項
今年度より導入された「落札予定決定日時」について、入札後に他案件の受注等で「取下げ」を行う際のルールは据置きで、1人の技術者で開札から落札決定までが重複する複数案件の入札参加を行う際に、「開札時刻の30分前までに取下げを行う」という現行のルールでは、開札以降は取下げが認められず、同一技術者による複数案件の落札決定となることでの業法違反による指名停止等のリスクから、入札機会が減少することとなっている。ついては、取下げ期間の設定を落札決定の前日までに辞退できる制度に変更できないかとの問いに対しては、「ルールの見直しを行い、早期に改良案を発信したい」とし、優秀な若年層技術者が中核的な技術者になってキャリアアップできるよう総合評価方式の技術者等の評価方法について、企業の施工能力(実績)を評価し、技術者等の能力(配置予定技術者等の実績)は評価の対象としない総合評価のタイプ(特別簡易型U型および若手・女性技術者チャレンジ型)を増やすように見直してもらいたいとの意見に対しては、「総合評価の適用範囲をしっかりと把握し、関係機関と協議した上で判断したい。また、人材高齢化が深刻な中、若手の育成は急務。総合評価のみならず価格競争の中でも育成に係る改善を図りたい」と答えた。
F契約関係や提出書類等の電子化の促進
全資料について電子入札を利用した提出(アップロードシステムの構築)が可能となるよう検討を求めたところ、「システムの容量の関係で現状では改良が難しい。システムそのものの改良を図るか他の方法で改善を検討したい」と回答した。
提供:滋賀産業新聞