河川を自律的に制御する新技術の開発を目指すARCEプロジェクトは8日、「第7回土木科学シンポジウム」を新潟市中央区で開き、行政や大学関係者、学生、建設業、コンサルタントから約130人が参加した。
「100年後の人と河川の姿を考える」のテーマを実現するための技術開発や、その基盤となる計画系業務を担う人材の育成と確保が困難という課題解決に向けて産学官が意見を交わした。後援は水ラボコンソーシアム、和合館工学舎。
はじめに、新潟大学の安田浩保准教授(水ラボ共同代表)は、近年の激甚化・頻発化する自然災害に触れ「治水を重視する傾向があり、水害を受けてそれに翻弄(ほんろう)され、環境が希薄になってきている。安全と豊かな環境をどう残せるか」と治水と環境の両立を説いた。また、建設業界が直面する人手不足などに対して「数が足りないことに焦点を当てていたが、もっと質の問題に踏み込むべきだ。(先進国と比べ)2000年以降、日本の土木工学の下落が大きい。国産技術の保持と人材確保、教育機関の維持が困難」と警鐘を鳴らす一方、「分野全体で必要人材の設計と技術開発の努力を10年継続できれば体質改善できる」と前を見る。
続いて、元北陸地方整備局信濃川河川事務所長を務め、国土交通省水管理・国土保全局砂防部海岸室の室永武司室長は「我々の強みはルールメーカー(全国一斉)であるが、弱みは新技術に触れにくい。良い技術や知見をあげてほしい」と産学官のマッチングの重要性を説いた。国交省が取り組んでいる流域データプラットフォーム、3次元河川管内図、ドローン巡視およびAI(人工知能)画像診断、洪水予測、遠隔臨場検査、波浪打上げ高予測などを挙げながら、「共通するのは生産性向上。(2040年問題を踏まえ)将来は機械が目となり手となり働く。アイ・コンストラクション2・0では省人化を3割進め、生産性向上を1・5倍高める」と強調した。