県県土整備部は6日、千葉港と木更津港の脱炭素化に向けた協議会の第3回を千葉市内のTKPガーデンシティ千葉3階「シンフォニア」で開催し、千葉港・木更津港港湾脱炭素化推進計画の案を示した。推進計画は、脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化や次世代エネルギーのサプライチェーンの拠点化を図り、2050年度のカーボンニュートラルを目指すもの。今後は、推進計画案のパブリックコメントを経て、25年1月に推進計画最終案を提示する予定。策定後は、毎年度協議会を開くなど、計画の達成状況の確認・評価を行う。
計画の対象となる範囲、施設および所有・管理者は▽ターミナル内の上屋、管理棟、照明施設など=県(港湾管理者)▽ターミナル内(公共埠頭)の荷役機械=県(港湾管理者)▽停泊中の船舶=民間事業者(船社)▽貨物輸送車両=民間事業者(貨物運送事業者)▽ターミナル外の工場、倉庫、発電所など=立地企業など。
計画期間は50年まで。25年度までの短期、30年度までの中期、50年度までの長期に分け、中期のCO2排出量3257万t/年(13年比31・7%減)、長期のCO2排出量実質ゼロを目標に設定している。
また、50年度における次世代エネルギーの例として水素・アンモニアの需要量を推計。現在の経済活動が将来も継続するという前提の下、現状(22年度)のエネルギー使用量が全て置き換わると仮定した場合の供給目標として、水素の場合約465万t/年、アンモニアの場合約2957tを挙げた/年を設定した。
温室効果ガスの排出量削減および、吸収作用の保全・強化に関する事業として▽中期=ターミナル内の照明施設のLED化(県)、船舶への陸上電力供給設備の設置(県)、ステンレス製造における電気炉プロセスの導入(JFEスチール)、アンモニア燃料のナフサ分解炉実用化(丸善石油化学)、高炉水素還元技術(COURSE50)の実機実証▽長期=水素燃料などを使用する脱炭素型荷役機械(ガントリークレーン)の導入(県)、上屋への太陽光発電設備の設置(県)、水素ステーションの導入(県)、首都圏CCS(二酸化炭素回収・地下貯留)事業(日本製鉄、INPEX、関東天然瓦斯開発)――などを挙げた。
次世代EN転換で施設の規模を検討
水素・アンモニアの供給施設計画として、係留施設(岸壁)と貯蔵施設の必要規模を示した。
係留施設は、液化水素の場合、必要岸壁延長445m/バース、必要岸壁水深10・5m、必要岸壁数3バース。また、アンモニアの場合、必要岸壁延長293m/バース、必要岸壁水深13・5m、必要岸壁数3バースとした。
貯蔵施設は、液化水素の場合、タンク容量3550t・5万m3、タンク直径59m、必要面積1万3924u/1基、合計必要基数112基。アンモニアの場合、タンク容量5万t・7万3314m3、タンク直径60m、必要面積1万4400u/1基、合計必要基数50基とした。
協議会の名称は「千葉港港湾脱炭素化推進協議会」と「木更津港港湾脱炭素化推進協議会」で、合同開催している。会長の橘川武郎・国際大学学長・大学院国際経営学研究科教授など学識経験者、関係企業、関係団体、関係行政機関、港湾管理者で構成している。
橘川会長は冒頭のあいさつで、米大統領選挙におけるトランプ氏の再選により、国際的なカーボンニュートラルの動きが後退する可能性に言及した一方で、「大きな流れは変わらない」との見方を示し、「千葉港・木更津港のカーボンニュートラルに向けて努力を続けていくことは非常に重要」と強調した。
また、「カーボンニュートラルポートは、陸と港の協力無しにはあり得ない。京葉コンビナートはカーボンニュートランのポテンシャルを有する地域だが、陸の具体的なプランが進まない状況が一向に改善されない」と指摘し、今回をもって会長職を辞する意向を示した。