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建設経済新聞社
2024/10/09

【京都】市立学校空調設備整備に係るサウンディング型市場調査 参入意向「非常にある」は5グループ 事業方式はPFI(BTO)が最多

 京都市教育委員会が実施した市立学校空調設備整備に係るサウンディング型市場調査の結果、参入意向が非常にあると回答した事業者は5グループだったことがわかった。
 市立小・中学校の空調設備を巡っては、平成16〜17年度に中学校、平成18年度に小学校の全普通教室への整備を完了。特別教室についても平成25年度に音楽室・図書室・コンピュータ教室への整備を完了した。
 整備から約20年が経過し、膨大な数の空調の老朽化が一斉に進んでおり、今後、教育活動に深刻な影響を与える重大な不具合が広範囲の学校で生じる前に、児童生徒等の健康を保持し、夏季の学習環境を保証するため、既存の空調設備の大規模な更新を早急に進めるとともに、体育の授業や運動部活動時の熱中症対策、災害による避難時の安心・安全な生活環境向上の観点から、体育館への空調設備の新設についての検討を行う。
 空調設備の整備を行う事業の実施に向け、事業方式や事業内容、事業スケジュールなどの事業条件について、事業の担い手となることが期待される民間事業者から広く意見等を求めることを目的に、京都市立学校空調設備整備に係るサウンディング型市場調査を実施した。
 整備対象校は小学校150校、中学校64校、義務教育学校8校、高等学校9校、総合支援学校9校(統廃合等で減少する可能性がある)。整備対象諸室は、▽普通教室等(1室64u程度)(ただし高・総合支援学校は除く)▽体育館(第二体育館、武道場含む)(小・中・義務・高・総合支援学校)。
 サウンディングの項目は、@当該事業の参入意向と参入意向が向上する条件A事業方式に関する意見、要望B普通教室以外の施設の空調設備整備に関する意見・要望C設計・施工・維持管理に必要なスケジュールD体育館空調の仕様に関する意見、要望E対象施設の現地見学に関する意見、要望Fリスク分担に関する意見、要望G概算事業費Hその他京都市に対する意見、要望。 事前調査を7月31日〜8月20日、サウンディング調査を8月28日〜9月4日に実施。参加事業者は7事業者・グループ。
 参入意向が非常にあると回答した事業者は5グループ。
 参入意向に大きく影響する事業条件について確認した。主な回答は次の通り。
 参入意向が向上する条件は「PFI等プロポーザル形式であること」(2。カッコ内は回答数、以下同じ)、「各業務に求められる要求水準が適切であること」(2)、「市外業者の参入条件のハードルが高すぎないこと」(2)、「資材高騰や職人不足など現状を反映した適切な予算であること」(2)、「体育館において、多様な災害に備える空調方式の採用や総合的な環境整備が行われること」(1)、「設計・施工・工事監理業務以外を担務する企業がSPCに出資することができること」(1)、「市と事業者の間に適正なリスク分担があること」(1)、「空調整備に限らない複合的な整備であること」(1)、「各学校との調整を実施する際に市の適切なサポートがあること」(1)、「現実的な工期の設定であること」(1)。
 事業を実施するにあたり、従来方式、DBO方式、PFI(BTO)方式のうちどの方式が望ましいか確認したところ、多くのグループがPFI(BTO)方式による事業を希望した。
 「希望する事業方式 PFI(BTO)方式」(5)で、理由は「自社のノウハウを活かすことができる方式である」(3)、「価格だけでなく技術提案力も評価されるため、事業提案に対し、適正な評価をもらえる方式である」(1)、「自社のノウハウを活かすことができることだけでなく、財政負担を平準化できるという市のメリットもある方式である」(1)。
 「希望する事業方式 DBO方式」(1)で、理由は「官民双方の業務効率化が図れる。市は、設計管理業務の削減や民間のノウハウ活用ができるほか、事業者は技術力、施工力等の強みを活かした幅広い提案で入札に臨むことができる」(1)。
 「希望する事業方式 従来方式」は(0)。
 その他意見として「SPC設立には時間とコストが必要であるため、設立するかどうかは慎重に検討したい」(1)。
 事業に給食室及び体育館の空調整備を含むことに対し、参加グループにとってのメリットとデメリットを確認した。
 給食室同時整備のメリットは「同時施工により集中リモコンなどによる統一的な空調設計ができ、利便性の向上、施工費、保守費の削減に寄与できる」(4)。
 給食室同時整備のデメリットは「他の対象室と要件が大きく異なるため、施工及び維持管理の体制構築のハードルが上がる」(3)、「施工が長期休暇に限定されると、普通教室と同じ工期で施工できない可能性が高い」(3)、「厨房用室内機は比較的生産量が少ないため、納入が集中すると工期に影響が出る恐れがある」(1)、「空調だけでなく、屋根の断熱材などの建築工事を含めるのであれば、専門領域の異なる事業者をグループに入れる必要がある」(1)。
 一方、体育館同時整備のメリットは「同時施工により集中リモコンなどによる統一的な空調設計ができ、利便性の向上、施工費、保守費の削減に寄与できる」(5)。
 体育館同時整備のデメリットは「学校によって形状や断熱性が異なるため、性能発注とすると設計業務に大きな負荷がかかることが想定される」(1)、「施工スケジュールが長くなる可能性がある」(1)。
 その他意見として「体育館空調を含むのであれば、災害時の対応(必要な運転時間)や機器能力等、評価方法などの考え方のみを明確にし、事業者の自由提案とする方が良いのではないか」(2)、「体育館空調の検討において、災害時の対応(電源自立型GHP)を検討されるのであれば機器能力(室外機台数)等を要求水準でまとめていただきたい」(1)。
 事業の設計・施工・維持管理期間の考え方について確認した。
 設計・施工期間について「体育館は、数週間の使用停止期間が必要である」(2)、「夏期休暇等長期休暇を利用すれば短縮が可能である」(1)、「更新設備のみを対象とすれば、仕様が明確になるため、設計・施工工数の削減が可能である」(1)、「空調停止期間を設ける必要があるため、学校の協力体制によって施工期間は異なる」(1)、「気候変動や利用形態を考慮し、学校の意見を踏まえて検討する必要がある」(1)。
 維持管理期間について「空調設備の設計耐用年数とすると、空調設備の定格能力を維持しやすく、適正なコストで最も高水準な維持管理業務が実現可能」(4)、「事業者独自の取り組みによっては、設計耐用年数を超えた長期にわたる保証が可能である」(1)、「平均気温の上昇やコロナウィルスの流行等の事情により、想定する運転時間の前提を超える運用が増加している」(1)、「設計耐用年数を超えると不具合発生リスクが極めて高く、リスクコントロールが難しい」(1)、「当該事業で更新しない空調のメンテナンスを本事業に含む場合は、トラブルを避けるため、必要な対応とそうでない対応を明確に要求水準書に記載してほしい」(1)。
 熱中症対策だけではなく、避難所対応を行うことも想定した場合、体育館空調に設置する空調の仕様はどのようなものが考えられるか確認した。
 設置方式の提案について「停電時自立型GHP」(2)で、理由と考え方は「ランニングコストの低減と、停電時における照明やコンセントへの電力供給といった災害時の避難所対策の両立が可能である」(1)、「プロパンエアー発生装置を設置することで、万が一都市ガス供給が途絶えた場合でも停電対応型GHPを稼働させ、体育館の空調や照明・コンセント負荷への電力供給が可能である」(1)、「停電時自立型GHPの機器が需要過多により受注停止としているメ
ーカーもある」(1)。
 「GHP(停電時自立型でない)」(2)で、理由と考え方は「小型の発電機で対応可能。イニシャルコストの低廉化が図れる」(2)、「地下配管供給のため風水害に強く、LPガスは災害時の早期復旧が
可能である」(1)。
 「EHP+発電機」(1)で、理由と考え方は「自立発電GHPは需要が多く、機器確保が困難となっている」(1)。
 その体験として「避難所では、感染症対策や悪臭対策なども求められる」(2)。
 事業の整備にあたり、どの程度の学校の見学を希望するか、またどのような学校の現地見学を希望するか確認した。
 対象校数に関する希望について「全対象校を見学できることが理想的であるが、対象校数が多いため、タイプの違う学校を網羅したサンプル調査が現実的である」(5)。
 「現地見学を希望する学校の仕様」について「設置に当たっての特別な配慮が必要な学校(学校周辺の道路が狭い、配線を害する生物が生息している等)」(1)、「校舎のつくりが特殊な学校(竣工から10年〜15年程度経過した学校に多い)」(1)、「新設教室が多く、電気容量の増設が必要な学校」(1)。
 市と事業者の適切なリスク分担のために検討することが望ましい事項について確認した。
 物価変動リスクについて「設計施工期間中の製品のモデルチェンジによる価格変動が発生した際に、一般の資材の物価変動と同じ扱いをしてほしい」(1)、「インフレスライドの基準時期を事業者が予定価格公表時点としてほしい。予定価格決定から提案までのインフレについても考慮してほしい」(1)、「設備工事のインフレが反映できる指数を検討してほしい」(1)。
 エネルギーコスト変動リスクについて「機器の経年劣化と、猛暑や窓開け運転など高負荷に使用したことに起因する性能低下リスクは、市のリスクとしてほしい」(1)。
 住民対応リスクについて「事業者が行う調査、施工に関する近隣住民の訴訟・苦情・要望などへの対応に関して、リスク分担を明確にしてほしい」(1)。
 不可抗力リスクについて「大規模感染症による事業進行停止や、施工に関わる資機材の調達不良(昨今の半導体不足による納期遅延、電源配線等の入手困難等)は市のリスク、もしくは協議可能なものとしてほしい」(1)。
 概算事業費算出に当たっての条件や考え方について確認した。
 「維持管理期間が13年を超えると故障のリスクが高まるため、13年以内の場合と比較して費用が大きくなる傾向がある」(1)、「新設整備を含むため、現段階では不明な仕様が多く、幅を持たせた事業費を算出せざるを得ない」(1)、「昨今の物価上昇を考慮した予定価格としてほしい。PFI事業で一般的に用いられる価格指数は、現在の空調事業の価格上昇を正確に表しているとは言い難い」(1)。
 その他、京都市に対する意見、要望について確認した。
 円滑な実施体制の構築について「空調停止期間中に仮設空調を設置すると事業費が増加するため、教室の移動など学校側の協力体制が必要である」(1)、「機器の配送回数を削減するため学校で保管スペースを確保してほしい。保管スペースがない場合は、施工の進捗に合わせて配送を行うため、配送遅れやCO2増加などが生じる可能性がある」(1)。
 事業者負担の低減について「標準施工図等があると、各学校・教室毎の設計・負荷計算を省略することができ、事業費の低減につながる」(1)、「具体的な事業費や施工レベルを確認するために、従来方式の案件があれば、仕様や図面を開示してほしい」(1)、「提案書で必要となる資料を最低限の資料に限定してほしい」(1)、「複数社のコンソ―シアムの場合、捺印に時間を要するため、各社の連記式としない、もしくは印鑑レスの対応としてほしい」(1)、「入札公告から提案書提出まで充分な期間を設定してほしい」(1)。
 担当は京都市教育委員会事務局総務部教育環境整備室。
     ◇     
 なお市教委は、京都市立学校空調設備整備PFI手法導入可能性調査及び実施支援業務委託について、公募型簡易プロポーザルにより、有限責任監査法人トーマツを受託候補者に選定した。
 空調設備の一斉更新・整備及び維持管理にあたり、財政負担の削減効果や民間事業者の受注能力など多方面からの検討により、PFI事業として成立するかどうかを判断するための調査を実施するもの。
 業務内容は、@既存空調設備の現状把握及び更新・整備対象の検討A体育館空調の整備方針の検討B事業スケジュールの検討C事業費総額の算定D実施に向けた整理・中間まとめE事業実施支援。
 事業対象施設は、元町小学校など150校、加茂川中学校など64校、大原小中学校など8校、紫野高等学校など10校、北総合支援学校など9校の合計241校。なお業務内容の@既存空調設備の現状把握及び更新・整備対象の検討は小学校・中学校・小中学校一貫校の222校のみで、高等学校・総合支援学校は調査・検討の対象外。
 委託期間は令和7年3月31日まで。
 委託金額の上限額は1000万円(税込)。