日本塗装工業会県支部(松田隆二支部長)と県塗装工業組合(近江樹一郎理事長)は8月30日、県に対して塗装業者への分離発注や発注増などを要望。県内の建築物と構造物の健全な維持や、担い手の育成確保などの観点からも、技能者を直接雇用する県内塗装工事業の振興に対する当局の理解を求めた。
同支部の松田支部長、高橋伸也副支部長、瀬川喜浩副支部長、工組の近江理事長と三上徳昭副理事長、両団体の顧問を務める城内愛彦県議らが県庁を訪問。岩ア等技監兼県土整備部河川港湾担当技監に対して、松田支部長と近江理事長から要望書を手交した。
今年度は「塗装業者への分離発注」「塗装業者への発注件数・発注額の増」「入札制度」「予定価格事前公表の見直し」の4テーマで要望した。分離発注に関しては、塗装の割合が多い工事を塗装工事として発注することを要請。また、低濃度PCB廃棄物の処理期限が27年3月末に迫っている状況を示した上で「対象となる橋梁などの塗り替えを、早期に実施する必要がある。廃棄物の適正処理が可能な塗装工事業者に優先発注してほしい」と呼び掛けた。
発注の増加に関しては、技能者の雇用確保や技能継承の観点からも、小ロット化などに努めて、より多くの企業が受注できる機会を確保することを要望。発注件数30件以上、発注金額は20億円以上を確保することを求めた。
入札制度の関連では、「総合評価の施工実績に一次下請けの実績を加えること」「建築・鋼橋塗装技能士も評価点数の対象に加えるほか、登録基幹技能者の配点を引き上げること」「塗装工事として発注する場合は、他工種での表彰実績や週休2日の取り組み実績を考慮しないこと」「自社施工要件を強化すること」などを要望。大規模な塗装工事業では特定建設業の許可が求められる点については、「入札に参加できる企業が限定される」と懸念を示した。
県側からは、原則として分離発注に努めていることや公共事業予算の確保を国に対して要望している状況などを説明。入札制度については、国や他県の動向を見ながら、必要な見直しを図っていく姿勢を示した。
両団体からは、塗装技能者の育成、時間外労働の罰則付き上限規制への対応、専門工事業におけるM&A、総合建設業の塗装工事への参入などの課題について問題提起。近江理事長は「工組には小規模な企業も多い。小規模事業者に配慮した発注をお願いしたい」、松田支部長は「要望や陳情だけではなく、意見交換できる場を設けたい」と提言した。
城内議員は「復興需要も終了し、いずれの企業も厳しい状況にある」とした上で「地域を支える企業と人材を大切にすることが発注者の責務だ。岩手で働く技能者と技術者を大切にするために、汗を流すときではないか」と指摘。入札制度などの問題も含め、塗装工事業と意見交換の場を設けることを促した。
提供:日刊岩手建設工業新聞