京都府は8日、旧総合資料館跡地等の活用に係る意見聴取会議(第4回)を開催。跡地等に整備を検討する舞台芸術・視覚芸術拠点施設について、学識経験者らから意見を聞いた。
府は、これまでの意見を踏まえ、舞台芸術・視覚芸術拠点施設が北山エリアの中で果たすべき機能・役割について、▽北山エリアのエントランスにふさわしい文化・芸術の魅力あふれる顔づくり(北山エリア北東部において多様な人々が集うエントランスとしての顔づくりを目指す。また地下鉄駅とつながる駅まち一体型の空間形成を図る。北山通沿道への文化・芸術による魅力の滲み出しを図るとともに、北山通から南にのびるプロムナードにより、通りを行き交う人々を北山エリアに誘い込み、エリア全体での回遊性の向上を目指す)▽「自然環境と文化芸術が共存する北山エリア」を発信するまちなみの形成(隣接する賀茂川や植物園の自然環境との調和に配慮するとともに、周辺住宅地のまちなみにも配慮した景観形成を目指す。京都の中でも稀有な郊外性を活かし、緑に囲まれた中に文化・芸術・学術施設が集積する環境づくりを目指すとともに、地球環境に配慮した都市空間として、国内外からの来街者に北山エリアの魅力を発信する)▽交流・憩いの場の創出、良好な環境の維持による地域の価値向上(エリア内に交流や憩いの場となるパブリックスペースを設け、緑陰による心地よい空間を提供し、地域住民・府民のウェルビーイングに貢献する。地域住民や周辺施設の管理者など北山エリアに関わる様々な人々のつながりを大切にしながらエリアマネジメントを推進していくことで、良好な環境の維持や地域の価値向上を図る)と整理した。
具体的な機能については、▽ホール(全ての客席が視覚的にも聴覚的にも良好な鑑賞条件となる配置にするため、客席の幅は舞台の開口幅よりも広くなりすぎないよう配慮が必要等)▽スタジオ(多様な利用者が使い易いよう、小シアター・中シアター双方の複数設置が必要となるが、必ずしもホール部分との合築は必要なく、芝居小屋のイメージや可変なものも含めて検討。ホール利用者の練習用にも活用できるよう、ホールの舞台寸法に準じる広さを有する大シアターが必要等)▽ギャラリー(展示室は100u程度であればアマチュア団体も利用しやすく、可動間壁などにより分割使用も想定。大型の絵画や書道の展示等に対応するためには4m以上の天井高さが必要等)▽エントランス(建物の主入口内の空間は、それぞれの目的施設にアプローチするためのスペースであり、ホールの開場を待つ人々の待機スペースとなることから、できるだけ大きな空間の確保が必要等)▽プロムナード(エリア全体を南北に結ぶ歩行者空間として、府立大学・歴彩館から北山通につながるプロムナードを設置。舞台芸術・視覚芸術拠点施設、京都コンサートホール、陶板名画の庭に囲まれた広場を計画するなど、来訪者、府民の交流イベント開催時の空間を設け、各施設間の連携を促進する機能が必要。プロムナードに面する諸室にはできる限りガラス張りの開口部を設け、内部の活動が見通せるようにすることも検討等)などと整理した。
これらを踏まえ、一つの例として配置図を示し、今後求める規模や機能に応じた検討が必要とした。
付帯施設について、舞台芸術・視覚芸術拠点施設だけでなく、エリア内各施設の付帯施設として位置付け。幅広い施設形態が考えられ、施設イメージとして、ショップ、カフェ、迎賓、バンケット施設、みどりと文化の交流施設、市民・大学交流センター、産学連携イノベーション施設、ラボやワークショップ施設や滞在型創作・研究施設、情報センター・ライブラリー等、植物園の学習連携、情報発信施設を例示した。
また、意見聴取会議では、舞台芸術・視覚芸術拠点施設をはじめとした本格活用までは、都市計画に関する手続きや埋蔵文化財調査など相応の時間を要することから、既存建物の解体とあわせて、北山エリアの魅力向上につながる遊休地の有効活用を行うにあたり、日本リグランドが進める旧総合資料館敷地暫定活用事業について報告した。
同社が提案した暫定活用計画「文化と憩いに彩られたライフスタイルを提案する住宅公園」によると、7棟程度のモデルハウスを設置して「文化芸術が身近にある生活」をテーマとした住宅展示場を整備するほか、ショップやカフェ、レントスペース、アートテラス、全天候型ドッグラン、特別災害スペースを整備する予定。
解体工事は令和6年1月31日〜7年1月31日を予定。
貸付期間は令和6年1月1日〜令和14年3月31日。
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旧総合資料館(京都市左京区下鴨半木町1−4)は、図書館や文書館、博物館の3つの機能を持つ施設として昭和38年から運営してきたが、耐震性の課題や老朽化のため、府立京都学・歴彩館へ機能を移転した上で平成28年9月に閉館した。
敷地面積は1万2995・99u(登記・実測)。用途地域は第二種中高層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率200%)。高度地区は20m第1種高度地区。
なお府は旧総合資料館跡地等の活用に係る整備検討支援業務について、公募型プロポーザルで日建設計(大阪市中央区)を選定。令和5年8月に随意契約した。
委託業務の内容は、想定される複合施設の整備プランについて、建築基準関連法規の確認等を含め、各諸室の面積、配置、構成等の検討とその検討に基づいた土地利用(施設配置図)、平面図及び断面図を作成の上、概算工事費を算出する。作成するプランは3案程度でシングルライン程度のものとする。また整備に係る京都府の検討状況に応じて、技術的助言等を行うとともに、整備プランを3回程度更新することとする。併せて、旧総合資料館跡地等は北山エリアのエントランスと位置付けており、特にエリア内他施設との連携が重要であることから、その方策について、エリア内他施設の特徴・機能・利用実態等を踏まえて検討することとする。エリア内中核施設である府立植物園との連携については「植物園整備に向けた施策の具体的な方向性」を基に十分に考慮することとする。委託期間は令和6年3月29日まで。