県県土整備部は8日、第3回一宮川護岸工事検証会議を県庁中庁舎4階県土整備部会議室で開催した。令和5年台風第13号に伴い一宮川流域で浸水被害が発生した際、護岸工事における仮締め切り堤防の一部で必要な高さを満足していない箇所があったことを受けたもので、浸水要因を明らかにするためのシミュレーションの結果に基づく災害検証会議(座長=加藤孝明・東京大学生産技術研究所教授)の見解も踏まえ、「県、施工者の賠償責任は認められない」と結論付けた。また県は、新たな事業などの整備手法を選択する際には、シミュレーションモデルを活用し、効果の分析・検証を行っていきたいとの考えを示した。
オンラインで出席したオブザーバーの加藤教授は、今次災害の浸水要因に関して「変状と施工不備が無くても、未曽有の豪雨により河川水位が上昇し、堤防を越水した」などの推測から「施工不備の有無は、浸水量にほぼ影響しない」との見解を示した。
座長の橋一弥弁護士は、シミュレーションの結果も踏まえ、県の河川整備計画などは妥当であり、また施工不備と水害拡大の因果関係を法的に認定することはできないとして「県、施工者の賠償責任は認められない」と結論付けた。
一方で「県に賠償責任は認められないものの、施工不備を発見できなかった事実に鑑み、パトロール体制など管理体制の充実を図るべき」と指摘した。
県は、仮締め切り堤防の高さ不足を見逃した反省から、巡視方法の見直しを行い、マニュアルを作成したと報告。「いただいた意見を踏まえ、工事管理を徹底しつつ、工事の完成に向けて進捗を図っていきたい」と述べた。
シミュレーションモデルについては「精緻かつ、内水氾濫・外水氾濫のハイブリッドなものとなった」と話し、「一宮川流域において新たな事業などの整備手法を選択する際には、このモデルを用いて効果の分析・検証を行っていきたい。また、内水氾濫・外水氾濫を多面的に拾っていく知見については、一つのモデルケースとして技術力の伝承を図っていきたい」との考えを示した。
池口正晃・県土整備部長は「今後の工事管理体制のあり方に対して意見を賜った。今回のような施工不備が二度と起きないよう、これからの土木行政に取り組んでいきたい」と力を込めた。