建設業労働災害防止協会千葉県支部柏分会(戸邉昌之分会長)の主催による「2024年度安全大会」が6月27日、柏市内のザ・クレストホテル柏で開かれた。会員67社が参加し、安全教育の徹底や安全管理体制の確立など、安全意識の高揚を図るために労働災害の防止に全力で取り組むことを決意する「安全大会宣言」を採択。柏労働基準監督署の松井祐介署長、県柏土木事務所の大出正弘所長らによる来賓祝辞のほか、柏労基署安全衛生課の篠田一課長が「最近の労働行政の動向」についての安全講話を実施。健康管理士でライフスタイルデザイナーなどの肩書を持つ栗原冬子氏を講師に迎え、『安全は健康管理から』〜危険を招く生活習慣病の予防〜をテーマに特別講演も行った。『安全意識の啓蒙活動』と称され、開始から30余年が経過した現在も、会員303人(35社)から395点の作品が寄せられた「安全標語」では、優秀入選者として、最優秀賞1件、優秀賞3件、佳作10件を表彰した。
「安全標語」入選者を表彰
主催者を代表して戸邉分会長は、建災防が独自で作成した「第9次建設業労働災害防止5か年計画」(2023年〜27年)に言及。昨年1年目は県内で10件の死亡災害が発生し、本年は既に6件の死亡災害が発生していることについて「死亡災害の原因は墜落・転落が大半である」と指摘し「平常時では冷静に考えることができ、危険な行動をとることはないだろうが、現場では急いで短絡的な行動をとったり、うっかり安全装置をかけ忘れるなどの要因が考えられる」と分析。「現場では慌てず、安全第一の平常心と、作業員がみんなで声を掛け合いながら、安全作業に従事して頂くことを願っている」と呼びかけた。
建設業の2024年問題として、本年4月から施行された時間外労働の上限規制に対しては「安全で安心して働ける魅力ある職場づくりのために、各社の創意工夫により対応して頂きたい」と要請。昨年、柏監督署管内で唯一発生した死亡災害が熱中症によるものだったことには「梅雨入りし、今後は昨年より高温になる予報も出ている」との注意を喚起した。
さらに「今年は熱中症警戒アラート発生が各地で予想されるが、スマートフォンでも確認できるようになった」と紹介するとともに「午後の作業前に作業服を着替えたり、靴下を履き替えたりすることで、リフレッシュ効果を得て気持ちよく午後の作業に臨める。是非とも試して頂きたい」と呼びかけ、あいさつとした。
良い流れを止めず無災害を追求して
労働行政を代表して柏労基署の松井署長は、管内建設業における昨年の死亡災害はゼロを達成し、今年もこれまでゼロ災を継続。休業4日以上災害も7件減少したことについて「管内で建設業に携わるみなさんの努力で成し得たものと考える」と称賛。「本日の安全大会を良い機会として、この流れを止めることなく、各現場において引き続き、無災害を追求して頂きたい」と力を込めた。
全国安全週間については「これを機に労使が一体となり、労働災害の防止と労働安全衛生活動の推進に取り組む。スローガンにもある危険に気付く感受性と、危険を摘み取る実効性、職場での協調性をそれぞれ養い活かしていくことで、労働災害のない現場を築いて頂きたい」と呼びかけ、祝辞とした。
熱中症への警鐘とさらなる安全意識
県の発注機関を代表して、柏土木事務所の大出所長は、建設業における現場の技能労働者の急速な高齢化や若者離れが深刻化する中で、今年4月から時間外労働の上限規制が適用されたことに言及。県としても「建設業が地域の守り手として持続的に発展できるよう、働き方改革や生産性の向上に努めることが重要だ」との考えを示した。
現在、職場環境の改善による担い手確保の取り組みとしては「完全週休2日制やICT施工技術の活用推進、フレックス工期の拡大などが着実に成果を上げている」とし「さらなる業務効率化を図るため、ASP情報共有システムや遠隔臨場などの普及に努めている」と説明。
東葛飾管内での県発注工事の事故については「22年度で7件、23年度で3件発生し、今年度は残念ながらこれまでに、管内で1件の労働災害が発生したと聞く」と報告。それらの対策として「県では一定規模の工事について、設計段階で安全審査を行い、円滑な施工のための条件明示や、適正な仮設費用、安全対策費用の計上に努めている」と強調。また「安全パトロールを実施し、問題があれば協議を行うなど、引き続き事故の防止に向けた取り組みを強化していく」との方針を示した。
最後に「これからは猛暑による過酷な作業環境により、事故のリスクが高まる季節となる」との警鐘を鳴らすとともに「さらなる安全意識と安全対策の向上に努めて頂きたい」と呼びかけ、祝辞を結んだ。