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北海道建設新聞社
2024/07/04

【北海道】開発局と寒地土研が十勝川千代田水路で堤防決壊実験

 【帯広】北海道開発局と寒地土木研究所は27日、幕別町内の十勝川千代田実験水路で堤防決壊実験に取り組んだ。研究機関など関係者400人が見守る中、堤防浸食や農地の土壌流亡を検証し、木造住宅の耐水害実験も展開した。気候変動により全国各地で未曽有の水害が発生する中、さまざまな角度からデータを集めて河川防災技術の向上に役立てる。
 実験水路は、千代田新水路の一部区間(延長1300m、幅30m)に設けた洪水を再現できる世界最大級の施設で、2008年を皮切りに12回の実験を繰り返してきた。過去には16年夏の台風災害をモデルに空知川の被災堤防を築造し、浸食のメカニズムを分析した。
 決壊実験では、16年夏の台風災害で決壊を免れた常呂川の堤防にならい、細粒分の多い粘性土質の堤体を再現。高さ2・5m、天端幅2mの大きさで、十勝川ほか管内維持を請け負う萬和建設(本社・幕別)が5月に造成した。
 毎秒4㎥の水量を流した結果、午前9時51分に越水。想定以上に頑丈なため午後2時から段階的に水量を増やすと、午後4時に決壊した。
 併せて実施した農地の土壌実験では、堤防下流に設置した土が流れる過程を観測。実験で取得したデータは今後、各研究機関で分析する。
 実験後に寒地土研の前田俊一上席研究員は「時間はかかったが、水上と水中で数多くのデータを取得できた。堤防の特性に応じた対策ができるよう生かしたい」と述べた。
 今回は住宅の性能を実験水路で初めて検証した。建築研究所と日本住宅・木材技術センターが参加し、一条工務店(本社・東京)の耐水害住宅で実験。建物はW造、2階、延べ107uで、水の浸入を防ぐ特殊弁を設置し、建物の浮上を防ぐ床下の重りなど対策を施してある。同住宅は5月末時点で全国に4500棟を新築している。
 実験では堤防下流に建物を設置。水深1m、流速毎秒2mの条件下で、室内外にカメラ28台や漏水センサーなどを取り付けて、住宅性能や建物が受ける力を検証した。
 一条工務店営業課の佐藤勇一副長は「検証結果を基に住宅の性能をより改良できたら」と話した。