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建通新聞社(神奈川)
2024/06/17

【神奈川】県など 上流取水の優先的利用を目指す

 神奈川県内の水道5事業者(神奈川県、横浜市、川崎市、横須賀市、神奈川県内広域水道企業団)は、国内でも前例のない上流取水の優先的利用の実現を目指す。県では、水需要の増加とともに河川の下流に取水施設を設けるなど拡張事業を行ってきた。人口減少が見込まれる今後は、脱炭素化に有利になる上流からの取水にかじを切る。5事業者の「施設整備計画」で方向性を示した。
 相模川の上流取水の優先的利用に当たっては、「沼本地点で未利用水利権を活用」、「下流の寒川地点の水利権をより上流の社家地点などで活用」の2点を目標とする。標高が高い上流で取水して自然流下させれば、下流からポンプで水をくみ上げるよりも電力の使用が抑えられるため、脱炭素化が期待できる。停電による断水や水質事故のリスク低減にもつながる。
 沼本地点(沼本ダム)では、川崎市の1日当たり14・2万立方bの水利権が未利用となっている。新たな施設整備は行わず、企業団による活用を検討中だ。
 現在は、相模川河口にある寒川地点(寒川取水堰)で取水している分の宮ケ瀬ダム開発水を、より上流に位置する社家地点(相模大堰)で取水する。寒川地点での取水は、寒川・小雀・有馬の3浄水場の廃止に伴って段階的に廃止する方針だ。
 上流取水の活用には課題もある。相模川は、水道用水や農業用水、工業用水など河川水を高度化に利用しているため、取水箇所の変更の影響が現れやすい。低水時には社家〜寒川間の河川流量の減少が予想されており、減水分をダムから補給する場合には、ダムの貯水状況に影響を与えるという新たな問題も生じる。河川環境の変化に対し、河川管理者や農業・漁業従事者など、多くの関係者との協議を重ねる必要がある。
 上流取水が可能になれば、個別更新を行った場合と比較して1年当たり約200dの二酸化炭素を削減できる。沼本地点の取水量をさらに増やすことができれば、効果もより大きくなる。今後、5事業者は制度面や水運用の手法、施設整備面など多角的な検討を行う考えだ。

提供:建通新聞社