県建築士会(勝部民男会長)は20日、盛岡市の岩手教育会館で、建築士の日を記念した講演会を催した。パリを拠点に活動する建築家の田根剛氏を講師に招き、その土地が持つ記憶を建築に生かす田根氏の建築理念を学んだ。
田根氏は「未来の記憶」をテーマに講演。パリ郊外で近代的なビルが解体され再開発がなされている事例を紹介し「新しかったはずの近代的なビルが先に解体され、パリらしい街並みが残されて再開発されている」と、近代主義の建築に抱いた違和感を吐露した。
その上で、考古学的な思想を建築に取り入れる手法を提案。「新しいデザインを考えるだけではなく、過去にはどのような場所だったのか、どのような暮らしがあったのかなど調査と考察を重ね、考古学的に掘り下げながら未来を考えている」と述べた。
田根氏は、自身の作品である「エストニア国立博物館」「弘前れんが倉庫美術館」なども例示し、エストニアでは負の遺産である旧ソ連時代の軍用滑走路を未来につなげるミュージアムとする意匠を提案したことを紹介。弘前では「リノベーションではなく『コンティニュエーション』という形で、先人が積み上げてきたレンガと、いまのレンガを足して時間軸を更新する『延築』として建築の未来の造り方を提案した」と話した。
現在取り組んでいる「帝国ホテル東京・新本館」についても紹介し、江戸から東京に至る時代の流れや、建築物としての大型ホテルの変遷なども踏まえたデザインコンセプトを提示した。迎賓館としての初代帝国ホテル、フランク・ロイド・ライトが設計し「東洋の宝石」と呼ばれた2代目、国際化の中で大型のグランドホテル化した3代目という流れを受けた、4代目の建築であると述べた。
提供:日刊岩手建設工業新聞