成田国際空港(NAA)は14日、「第8回『新しい成田空港』構想検討会」を東京都港区のUD神谷町ビル2階会議室(ウェブ併用)で開催した。さらなる機能強化の推進と合わせた▽旅客ターミナルの再構築▽航空物流機能の高度化▽空港アクセスの改善――などについての検討を踏まえ、地域・従業員にとって住みやすい地域づくりと空港を核とした産業誘致などを進める「エアポートシティ」の形成が重要との認識を共有した。
成田空港が目指すべき地域共生・まちづくりの姿を検討するため、ヴァンター空港(フィンランド)、ルートン空港(イギリス)、スキポール空港(オランダ)、ケフラビーク空港(アイスランド)、仁川国際空港(韓国)を例示した。
ヴァンター空港、ルートン空港はおおむね5km圏内にエアポートシティが形成されている「空港近接地型」、ほか3空港は同20km圏内にエアポートシティが形成されている「広域型」となっている。
空港周辺の開発手法に関しては、空港会社(国)と地域の自治体が開発会社などを設立し、連携して対応する事例が多い。また、典型的な産業形成の事例として、航空関連産業、ライフサイエンス、アグリテック・農業、グローバル企業のビジネス地区などがある。
海外空港事例調査で得られた知見から▽グローバルな視点とローカルな視点でヒト・モノ・投資を地域へ呼び込むことが重要▽「行政と空港が一体となった推進体制」の必要性▽無秩序の地域の開発を避けるための「ゾーニング」の必要性▽人材確保のための「生活環境」「教育環境」「就労環境」整備の必要性▽周辺環境に溶け込み、自然と調和したエアポートシティの形成――をポイントとして、関係者と具体化を図っていくことが求められるとした。
そのほか、将来の空港アクセスとして「空飛ぶクルマ」の実用化が期待されている。また、魅力的な就労環境づくりと、空港従業員やその家族が安心して暮らすことができる「住みたくなるまちづくり」の実現に向けた取り組みとして、就業・居住統合サイトの立ち上げやDMC「プラスナリタラボ」の設立について報告した。
エアポートシティの実現と住みたくなるまちづくりを推進するに当たり、実務者会議として「『新しい成田空港』構想検討における地域連絡会」を7月頃に設立する想定。四半期に1回程度の開催を予定している。
構成員は、空港周辺11市町(成田市、富里市、山武市、香取市、多古町、芝山町、横芝光町、栄町、神崎町、茨城県稲敷市、茨城県河内町)、千葉県、茨城県、NAA。NAAが事務局を務める。
連絡会では、地域と成田空港が未来のために相互に連携し、一体的・持続的に発展するための課題や取り組みを共有する。短期的視点として、住みたくなるまちづくりについて、各自治体が進める計画と課題を共有。中長期的視点として、エアポートシティの実現について、海外エアポートシティ開発事例の情報共有を図る。
会議の冒頭、あいさつに立った田村明比古代表取締役社長は「さらなる機能強化を機に、地域と持続的・一体的に発展していく空港になっていかなければならない。エアポートシティについて考える時期にきており、さらなる機能強化事業を待つのではなく、今から取り掛かるべき」との見方を示した。また、会議終了後には記者団の取材に応じ、構想の検討が深まっていることから、第9回検討会で取りまとめ案を提示することも考えると話した。
委員長を務めている山内弘隆・武蔵野大学経営学部特任教授・一橋大学名誉教授は会議後、「まちづくり・地域共生は、空港だけ・地域だけではできない」と述べ、県、国を含め、一体となって取り組む必要があると指摘した。