日本工業経済新聞社(群馬)
2024/05/13
【群馬】前川環境森林部長就任インタビュー
4月より県環境森林部長に就任した前川尚子氏。赤城公園の活性化事業や災害レジリエンスbPの実現など、重要な事業が多い中、就任にあたり「市町村や民間事業者と力をあわせ、前向きに進んでいきたい」と力強く語る。林業のあり方やICT施工による働き方改革など時代が着実に変化する中、今後の事業の進め方や考え方などを伺った。
―就任の抱負や心境をお聞かせください
前川 群馬県の環境・森林と経済の好循環実現のため、全力で取り組む。環境基本計画や森林・林業基本計画の目標達成に向けて、市町村や民間事業者の皆さまと力をあわせ、群馬県のポテンシャルを信じて、前向きに進んでいければと思う。
―本年度の主要事業となる県立赤城公園活性化事業について
前川 県立赤城公園は多彩で変化に富む自然環境に恵まれ、観光的にも高いポテンシャルを有しているが、県有施設の老朽化や利用者の減少などさまざまな課題を抱えている。
こうした課題を解決し、持続可能で魅力的な赤城公園を実現していくために、2022年10月に「県立赤城公園の活性化に向けた基本構想」を策定した。構想の実現に向けた取り組みを段階的に進めており、現在は第1段階として@拠点施設の再整備A景観形成手法の検討B自然環境を守る取り組みの検討を行っている。
拠点施設については、大沼(おの)に面した特別感のあるキャンプ場「大沼(おの)キャンプフィールド」、地域周遊の拠点となる「赤城ランドステーション」を再整備する。景観形成手法では、自然と調和した景観と土地利用の指針として赤城公園周辺エリアを対象とした「赤城山景観ガイドライン」を策定する。自然環境を守る取り組みでは、自然公園法が適用される「県立自然公園」としての指定を視野に検討したいと考えている。
いずれも基本構想で掲げる「赤城ウェルグラウンド」の実現に向け、関係する方々と意見交換を重ね、連携しながら事業を進めていきたい。
―災害レジリエンス1に向けた方針などを教えて下さい
前川 近年、短期間の強い降雨による自然災害が激甚化・頻発化している原因として、地球温暖化が影響していると考えられている。このような気候変動への適応として、県土の強靭化に向けた防災及び減災対策を推進し、地域防災力の向上に努める、「災害レジリエンス1」の推進が一層重要となっている。
このため、現在国が推進する「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」等を積極的に活用し、山地災害の復旧及び予防、既存施設の長寿命化等に取り組み、想定外の異常気象や豪雨が発生した場合においても、被害を最小化する防災力の向上に取り組んでいる。
また、防災力の強化にあたっては、県土の3分の2を占める森林の強靱化が必要不可欠であり、森林整備や治山事業を通じて、「ぐんま5つのゼロ宣言」の「自然災害による死者ゼロ」を実現し、県民の皆様の安全で安心な生活環境を保全していく。
―林業・山村のあり方についてお考えを聞かせてください
前川 かつて林業は、山村地域の重要な産業だった。
しかし、木材価格の低迷や不在村所有者の増加等により、木材生産活動の停滞や経営放棄森林の増加が進み、山村地域に住む方々の林業に対する意識が変化していると考えている。
先人たちがつくり育てた、持続可能な資源である森林を活用し、大胆な構造改革により林業・木材産業を自立した産業とすることが重要と考えている。このため、皆伐再造林により、県内の豊富な森林資源の循環利用を一層促進すると共に、林道などの林業生産基盤や木材加工流通施設の整備、林業労働力の確保・育成、木材販売流通改革など、需要創出と生産体制構築を両輪とする林業改革を進め、林業・木材産業の経営基盤の強化と収益性の向上を図っていきたい。
これらにより、本県の森林が持つポテンシャルを最大限に活用し、災害に強く、持続可能な森林の維持・造成、山村地域の雇用確保と地域活性化に寄与したいと考えている。
―ICT施工や働き方改革などの取り組みについては
前川 この4月から働き方改革関連法が建設業にも適用となり、工事現場の労働環境改善は待ったなしの状況となっている。
より良い工事を施工していただくためには、工事現場で働く方々にとって、より魅力的な労働環境であることが重要と考えている。週休2日の確保や長時間労働を防止するため、柔軟かつ適正な工期設定と施工時期の平準化を進めたいと考えており、必要な工期の確保について、日頃より建設業界の皆様と風通しの良い情報交換を行いたいと考えている。
また、ICTの活用は効率化や安全性の向上など、労働環境の改善に大きな効果が期待されている。森林土木では山間地の狭隘で通信環境が脆弱な地域での施工が多く、あまり取り組みが進んでいないが、レーザースキャナによる出来高測量など、実施可能な技術については一部導入している。業界の皆さまからも、森林土木に有効な技術について、要望や提案をお願いしたい。
―地域建設業にメッセージを
前川 平素より、建設業の皆さまには山地災害発生の危険性が高いと考えられる「山地災害危険地区」の点検や、「山地防災ヘルパー」としての情報収集など、県の防災・減災対策にご協力いただいており、大変感謝している。また、山地災害発生時には緊急応急の対応や本復旧に尽力いただいているほか、豚熱や鳥インフルエンザの防疫作業においても大きく寄与されており、まさに建設業界の皆様はエッセンシャルワーカーであると認識している。
今後も、県との連携を密にして、質の高い社会資本整備による県民の幸福度向上のため、ご協力をお願いしたい。