2024年春の褒章受章者が発表され、県内から全国宅地建物取引業保証協会富山本部長の前田隆夫氏、元県優良住宅協会会長の長森竹志氏が選ばれた。それぞれ宅建業、建築工事業に精励し、業界の発展に貢献したことが評価された。
前田隆夫氏に黄綬褒章/49年間、公平で誠実なサービス
大学を卒業した翌年の1975年に宅地建物取引業を開業。全国宅地建物取引業保証協会富山本部長など関係団体の役員を歴任する。今回の受章に対して「創業以来、49年にわたる仕事の内容を評価していただいた」と感謝の言葉を述べる。
父親から100万円を借りて地盤も、つてもないところからのスタートだった。「お客さまから求め、信頼される業者を目指せば、世の中に認められるはずとの『不確かな確信』で思い切った。とは言っても始めはどこからも仕事が来ず、足をかけてアパートの家主さんを訪ね、斡旋のお願いをして回った」と振り返る。「今思えば何とも無謀だ。同業の先輩から実業のイロハを教えてもらいながら、『公平で誠実なサービス』をモットーに一歩ずつ歩んできた」。
宅建業は賃貸住宅管理業者登録制度が始まり、賃貸不動産経営管理士の国家資格が誕生するなど「管理」分野の重要性が高まる。日本賃貸住宅管理協会に入り、2007〜20年には県支部長を務めた。代理納付制度が富山市に取り入れられたことが印象深い。「関東での導入を知り、これで家主さんは家賃滞納の不安がなくなり、業者も物件を紹介しやすくなる」との思いから申し入れた。このスキームはその後、円滑な実施を聞いた石川、福井県に広がることになった。
まえだ・たかお 73歳。前田商会不動産サービス(富山市)代表取締役。全国賃貸ネットワーク「アパマンショップ」に加盟し、富山清水店と富山駅南店を経営する。
長森竹志氏に黄綬褒章/今後も顧客満足を追求
長年、建築工事業に従事するとともに、関係団体の要職を務め業界の発展に寄与したことが認められた。「これもひとえに推挙していただいた富山県担当部局や一般社団法人富山県優良住宅協会(富優住協)のおかげであり、深く感謝します」と謙虚に受け止める。
昨年、創立30周年を迎えた富優住協。自身は創立時から携わり、会長、副会長をはじめ17年にわたり要職を歴任。「富山県産材を使い、富山県の気候風土にマッチした、富山らしい家づくりを進めてきた」と自任する。今後は「ZEHなど低炭素社会に対応した家づくりが求められる」と先を見据え、協会員のレベルアップを図る。
2015年に『災害時における応急仮設木造住宅の建設に関する協定』が、富山県と全国木造建設事業協会(全木協)との間で締結。富優住協では全木協の傘下団体として「建方実技研修やモデル住宅を建設するなど体制を整備してきた」とし、能登半島地震では協定に基づき、被災地に応急仮設木造住宅70戸を建設している。
自身が会長を務めるミヅホ建設(富山市)。18年に長男・稔氏に社長を譲った。「社長をはじめ若いスタッフには日々研鑽し、お客様により納得いただける家づくりを」と求める。自身も「まだまだ顧客満足を追求していきたい」と意欲に満ちており、今後も最前線での活躍が期待される。
ながもり・たけし 1948年生まれ、75歳。99年に建設大臣顕彰、2015年に国土交通大臣表彰を受賞。趣味は旅行、ゴルフ。