石川県西部緑地公園は、1970年代の開園以来徐々に規模を広げ、現在は見本市や競技会など多彩な催しに使われているが、建物の老朽化や施設配置など複数の課題を抱えている。県は現在の野球場と産業展示館1〜3号館の建て替えを柱とする再整備について話し合う「石川県西部緑地公園再整備構想検討委員会」(委員長・鍔隆弘金沢美大教授)の第4回会合を通じて構想をまとめた。
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それによると、新県立野球場は「子どもたちが夢と希望を抱く野球場」をコンセプトに据え、具現化のためのビジョンとして(1)阪神甲子園球場と同等のプレー環境の創出(2)選手ファーストの施設整備(3)誰もが楽しく観戦できる環境整備(4)環境負担軽減・ユニバーサルデザインによる施設設備(5)賑わいの創出―を掲げる。
日本野球機構(NPB)公式戦の開催を見据えると、金沢市の人口規模で現球場の1万7000席は、他県野球場と比べても不足しており、観客席を増やす必要があるが、他の地方球場での近年のNPB公式戦の入場者数や、人口減少・野球人口の減少傾向、県の財政事情も考慮し、5000席増の2万2000席規模で検討を進める。盛り込む設備にはグラウンドの天然芝、多様なニーズに対応可能な室内練習場、試合毎の選手のスムーズな入れ替えのためダッグアウト内にロッカールームを複数設置、屋根付き観覧席や車いす用観覧スペース、環境負荷軽減のための太陽光発電設備、雨水や地下水を活用する設備などを計画する。
また近年高まる熱中症への対策の必要性と雨天開催の快適性に考慮し観客席の屋根の設置や、大人数が同時に利用しても通信可能な高密度wi―fiのほか、スコアボードは大型映像とスコア等を一体表示するタイプ(一体型)の導入を検討している。
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新産業展示館は「多彩な催しで賑わい・交流の生まれる展示場」をコンセプトに(1)展示機能等を強化した使い勝手の良い空間(2)公園内の施設としての特色を活かして賑わい・交流を創出する空間(3)時代の要請に対応した利便性の高い空間―に重点を置いたものとする。
展示面積は現在の1〜3号館を合わせた広さを上回る1万3000平方メートル。現在の4号館などとの一体的な利活用がしやすい配置とし、分割して利用できる2つの展示ホールがホワイエでつながる形で配置する。大型車両の直接乗り入れなどが可能な搬入動線を設定するほか、大規模なコンベンションから小規模な展示会まで対応できる大中小の会議室、ホワイエなど滞留・くつろぎ空間の確保、緑地空間とつながりイベント利用が可能な大屋根スペースなどの設備、さらには防災拠点機能も備える。全館を通じてユニバーサルデザイン、バリアフリー、ZEB Ready(省エネ設備等の導入により建築物の年間エネルギー消費を50%以上削減)に対応した設備とする。
商談室・控室を充実させ、十分な天井高と床耐荷重を持ち利便性の高い床下ピット(電源・通信等)も備える。最新の照明・音響・空調・給排水設備や気軽に利用できるワークスペースの整備も行う。
周回道路を新たに配置
今回示された構想案は前回会合で示された構想骨子案と比較して(1)周回道路を公園外周に配置(2)アーバンスポーツエリアを緑地に隣接(3)屋外遊具や親水空間など魅力的な遊びの空間を創出(4)屋内こども遊戯施設は野球場外野スタンド下の空間への設置を検討(5)民間便利施設を緑地に隣接―の5点が変更されている。また前回会合の際に提案していた立体駐車場は、再整備後に需要を見て整備できるとして省かれた。
県では西部緑地公園再整備事業にあたり、昨年6月にPPP/PFI導入可能性調査をオリエンタルコンサルタンツ・日本総合研究所・アルスコンサルタンツ共同企業体へ委託。マーケットサウンディング調査として昨年8月にアンケート(37社)、同9月に個別ヒアリング(19社)を終えている。
同整備構想は今後、令和6年能登半島地震からの復旧復興に伴う県の財政への影響を見極めた上で対応を検討するとしている。