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北陸工業新聞社
2024/04/24

【富山】課題は「人材の確保と育成」/雇用実態・経営状況調査結果/県建設業協会

 富山県建設業協会は、2023年度「建設業の雇用実態と経営状況に関する調査報告書」をまとめた。
 同報告書は、建設業界の雇用改善や若手技術者・技能者の入職と定着を促す方策を検討するための基礎資料とする目的で、毎年建設業の雇用実態や経営状況を調査しているもの。調査の項目は、(1)対象企業の概要(2)雇用関係(3)外国人労働者(4)給与・賞与、賃上げ等(5)休日数・休日制度、働き方改革への対応(6)経営状況(7)経営環境の見通し(8)発注者の対応(9)今後の建設業のあり方(自由回答)−の9点。
 調査は、同協会の全会員企業519社を対象に、23年9月12日から同29日の期間で実施し、403社から回答を得た。回答率77・6%。
 報告書では、これまでの調査と同様、県内建設業にとって「人材の確保と育成」が大きな課題であり、若手を確保し育成を図るには、給与や休日、労働時間をはじめとした就労環境の改善を進め、入職や定着につなげる必要があるとした。
 また、建設業が将来にわたり、「地域の守り手」「地域の創り手」の役割を果たすためには、地域に必要な企業が健全に存続できる環境が必要とし、資材価格の高止まりや人件費が上昇する中、各企業が安定した経営を図り、地域経済を牽引していくため、中長期的に安定した工事量の確保が不可欠としている。

週休2日、62.3%に増加

 項目別の主な回答を見ると、調査企業は、主たる業種別で土木が70・2%と最多、建築が12・9%で続いた。大手を除く完成工事高は、1億円以上3億円未満が30・4%と最も多く、次いで多い1億円未満の26・9%と合わせると3億円未満が半数を占めた。公共工事比率が高い業種は舗装と土木、管工事で、これらを合わせると回答企業の8割弱を占め、公共工事の増減は、多くの企業の経営に直結する問題と指摘している。
 雇用関係は、技術職・技能職の年齢構成で、29歳以下の割合が昨年度の14・6%を上回る15・1%となったが、30歳代の割合が減少し続けている。10〜30歳代の合計は25・7%で、13年度調査の32・6%から6・9ポイント低下した一方、60歳代以上が上昇し、高齢化が進行している。23年度の採用予定数に対する充足率は20・7%。このうち新規学卒者の充足率が18・8%で、中途採用の22・6%よりも低く、企業が希望する採用数を満たすには程遠い状況。
 外国人労働者に関しては、受入企業が49社と19年度調査からわずかな減少だったが、人数は中国からの受け入れが激減し半減した。労働形態は技能実習生が7割を超えた。今後、外国人労働者を受け入れたいとする企業は19・8%で、理由は「若者が入職しない」「一時的な人手不足に対応するため」との回答が多かった。受け入れたくないとした企業は47・1%で、「日本語でのコミュケーションに不安がある」「文化の違いによるトラブルが不安」「生活面へのフォローなどへの負担が大きい」との回答が多くなっている。
 給与の増減では、「やや上昇」と「上昇」の合計割合が22年度の66・8%を7ポイント上回る73・8%となった。夏季賞与の支給割合は、89・0%と16年度以降で最も高い割合を示し、賞与上昇企業の割合も54・5%と、16年度以降で2番目に高い割合。今年度の賃上げ率は80・7%がプラスと回答したものの、来年度以降の計画では、「現在対応を検討中」(現時点では未定)との回答が35・8%と最も多かった。
 週休制度の状況は「4週8休」と「完全週休2日」の合計割合が、22年度の49・1%から62・3%に増加した。24年度の休日拡充計画では、完全週休2日を未導入の企業36・8%が拡充計画があると回答。うち、4割で「完全週休2日制」を導入予定と回答した。
 週休2日制の定着にあたっての課題は「天候不順等に対応できない」(除雪含む)との回答が38・9%で最多。行政機関等へ望むこととして、「週休2日を前提とした諸経費の計上」が44・7%、「週休2日を前提とした工期設定」が38・1%と多くなっている。
 長時間労働の要因の一つである工事書類の作成では、さらなる簡素化や書式の標準化・統一化の要望に併せ、建設ディレクターの導入や事務部門での工事書類作成業務の分担、ICTやBIM/CIMによる生産性向上も重要としている。
 一方、経営状況と経営環境の見通しでは、直近決算の営業利益率で、回答企業の81・6%が営業黒字と回答。前期比での営業利益率の増加企業は33・7%で、減少企業の59・0%を25・3ポイント下回っている。
 今後1年間の経営見通しでは、「現状維持」が52・8%と最も多いものの、「悪化」「やや悪化」の合計が37・9%で、「好転」と「やや好転」の合計9・3%を大きく上回り、今後の見通しが厳しくなると感じている企業が多かった。
 建設資材価格の上昇・高止まり傾向については、「全般的に上昇傾向にある」との回答が約7割を占め、大半の企業が経営に「非常に影響がある」「影響がある」と回答。具体的な資材では、生コンクリートが64・6%と最も多い。
 発注者の対応では、国・県・市町村とも「発注・施工時期の平準化」で「良い」との回答割合が3割から4割と他の項目と比べ低評価であり、依然として偏りが生じている。市町村では「発注・施工時期の平準化」「発注者の対応」(ワンデーレスポンス)の2つの項目で「悪い」が「良い」を上回った。発注者の対応は企業の経営環境を左右し、技術者や技能者の雇用にも影響を及ぼすと考えられ、社会資本整備の体制を維持するためにも、各発注機関でさらなる改善が進むことが求められるとしている。

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