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建設経済新聞社
2024/04/19

【京都】伏見工業高校跡の住宅街区開発 脱炭素の取組等で市長意見まとめ

 京都市はこのほど、(仮称)伏見工業高等学校跡地事業に係る環境配慮書案に対する市長意見をまとめ明らかにした。
 市長意見によると、@環境要素について、京都市技術指針に基づき抽出・設定するとともに、それらの要素について影響の程度を分かりやすく配慮書に記載することA東高瀬川について、影響の有無を配慮書に記載することB土壌汚染について、生活環境に影響がないよう十分に対応することC温室効果ガス排出量については、材料調達から廃棄物処理までのライフサイクル的評価に努めるとともに、エネルギー収支や二酸化炭素排出源など、算定根拠を可能な限り配慮書に記載することD当該事業は、国から剪定された「脱炭素先行地域」における事業であることを十分に踏まえ、脱炭素に係る取組とその効果について、可能な限り配慮書に記載すること。また事業実施時点における最先端の技術及び知見について、柔軟に導入するよう努めることE多数の住民が住むことを念頭に、洪水浸水等の災害への対応に十分に配慮することF工事車両の通行により周辺の交通状況が悪化しないよう配慮するとともに、供用後においてもカーシェアリングの促進など車利用の抑制について適切に配慮すること等。
 伏見工業高等学校跡地事業は、令和6年3月末閉校の京都市立伏見工業高校跡地及び隣接する元南部配水管理課用地を活用し、民間活力により、建物の屋根を最大限活用して太陽光発電と蓄電池を導入し、エネルギー収支がゼロとなるZEH(ゼッチ)住宅等を整備し、脱炭素仕様の住宅街区を創出する計画。事業者は、市の公募により、阪急阪神不動産梶i大阪市北区)を代表事業者とし、京阪電鉄不動産梶i大阪市中央区)と積水ハウス梶i大阪市北区)を構成員とする3社から成るグループに決定。
 市と同グループは、脱炭素仕様の住宅街区創出の取組の円滑化及び市有地の売買契約の締結に向けて協議することを目的とした基本協定を令和5年11月に締結。その後、京都市の3月市会に不動産処分案が提出され、令和6年3月27日に可決した。対象物件は伏見区深草六反田町5−1、深草藤田坪町8−3、深草中川原町13−1、深草鈴塚町13−3の3万4204u。売却金額は12億2022万2000円。
 当該街区では、脱炭素に加え、安心・安全、地域コミュニティの活性化等暮らしの質の向上を図るとともに、若者・子育て世代のニーズに合った住宅供給による定住促進や、人が集える場として近隣住民がともに利用できる公園・商業施設・コミュニティスペースを整備し、賑わいを創出する。再エネ100%電力契約とし、街区内での再エネ自家消費を最大化するため、蓄電池制御等によるエネルギーマネジメントを実施する。
 計画地は伏見区深草鈴塚町、深草六反田町他の4万0380・36uで、L字型の土地形状。用途地域は第一種住居地域(指定建蔽率60%、指定容積率200%)で、高度地区は20m第2種高度地区。
 グループの提案によると、集合住宅(分譲マンション)は7階建、高さ約20m。戸数310戸で、NearlyZEH−Mマンション・ファミリータイプが228戸、ZEH−M orientedマンション・コンパクトタイプが82戸。駐車場は170台程度、駐輪場は500台程度。
 戸建住宅は2階建、高さ約7m。次世代ZEH+戸建ファミリータイプの125戸。駐車場は1〜3台。
 業務用建物(地域貢献施設)は建築面積1015u、5階建、高さ約16m。1階は沿道・公園に開いた商業施設・地域交流スペース(ピロティ)、コワーキングスペース、交流ラウンジ兼食堂で構成し、学生・社会人の集住と相まって日常的な賑わいを生み出す場を創出する。2〜5階は学生・社会人寮とする。ZEH−M oriented・単身者タイプの114戸。駐車場は4台程度、駐輪場は110台程度。
 大規模住宅街(集合住宅、戸建住宅、業務用建物等)は、合計延約5万6768u(建築面積約2万0855u、建ぺい率約51・6%)で総戸数は549戸を予定。
 系統電力への依存度を下げるため、エネルギー需要の高いファミリー向けの分譲マンション・戸建住宅はエネファームを全戸採用。街区内の全ての住宅をZEH仕様とする。加えて、街区・住宅のパッシブデザイン等により、街区全体の住宅の省エネ化・省CO2化を図る。屋根に搭載できる太陽光発電設備を最大導入し、コンパクト分譲マンションへの戸別供給、地域貢献施設は一括受電方式、EVを活用した充放電等を組み合わせて、自家消費の最大化を図る。分譲マンションにはEV充電器(入居者用)を30基、戸建住宅には全戸EV充電器を設置する。
 主要な前面道路となる南側道路(深草緯23号線)に接続する開発道路は十分な滞留長を確保するとともに、開発道路の一部にイメージハンプを設け車速の低減を図るなど交通安全性を高める計画とする。
 開発公園を整備。地域住民が集まるスーパーマーケット前、前面道路(深草緯23号線)と東高瀬川の街角に計画。地域貢献施設と連続させ、大屋根のある大空間と一体となった公園とする。複合遊具、ベンチや充電スポット等を設ける。
 工事計画予定によると、環境影響評価手続きを経て、令和6年から解体・土壌対策工事・開発工事に着手、8年から建築工事にとりかかる。工事完了の目標時期は令和10年1月とし、同年4月に入居開始を予定。
 配慮書案では、施設配置A案(分譲マンションは北側にファミリータイプ228戸、南東側にコンパクトタイプ82戸とし、分棟して配置)とB案(全棟ファミリータイプ310戸とし、事業地の北西から北東に連なるように配置)の2案を比較検討。計画建物が周辺からの景観に与える影響は、B案よりA案のほうが各景観調査地点における景観への影響が低減されており、鳥瞰における景観への影響もA案のほうが低減されていると評価。日照阻害もB案と比較してA案が低いと評価。施設の供用での温室効果ガス等の影響の程度もB案と比較してA案が低いと評価した。
 工事期間中は、周辺交通への影響に配慮した工事車両動線、誘導員による安全確保、解体・造成に伴う残土の有効活用やPCa工法の採用、廃棄物の分別・リサイクル等の工夫による搬出入車両の削減等の配慮を行う。