日本銀行横浜支店は、3月の神奈川県分の企業短期経済観測調査(短観)を公表し、最近の景況感を示す業況判断指数(DI)は建設業がプラス29だった。前回2023年12月のプラス21から8ポイント上昇し、引き続き好調なマインドを維持した。一方、神奈川産業振興センターの中小企業景気動向調査によると、1―3月期の建設業の業況判断はマイナス2・4と慎重な見方を示す。日銀短観の調査対象は比較的規模の大きな企業が多く、企業規模によって景況判断が異なる様子がうかがえる。
日銀短観によると、建設業は先行きを示すDIもプラス47と11業種中最も高く、ここ10年でも19年に2回あったプラス39をさらに上回った。大竹弘樹支店長は「人手不足などの問題とは別に、工事単価や受注状況を踏まえた上で良いと判断している企業が多いようだ」と話す。全産業のDIはプラス16で、前回12月調査時と横ばいだった。
現状の雇用人員判断は、非製造業(建設、不動産、運輸など7業種)がマイナス48、製造業がマイナス19。全産業で人手が不足する中、非製造業の雇用状況はより深刻となっている。設備投資計画は、23年度実績が前年度比23・9%増、24年度は4・7%増を見込む。
短観の神奈川県分の調査対象は296社(製造業128社、非製造業168社、業種別の内訳は非公表)。
■中小建設業の業況は悪化
神奈川産業振興センターの実施した1〜3月期の中小企業景気動向調査では、同じ県内の業況でも違った風景が見えてくる。
建設業の1〜3月期の業況DIは、10〜12月期に比べて1・6ポイント低下。先行きについても4〜6月期がマイナス10・5、7〜9月期がマイナス17・9と悪化を見込む。
ただ、中小企業動向調査の中でも、他業種と比較すると建設業の業況は決して悪くない。
全業種(建設業、製造業、卸売業、小売業、飲食店、サービス業)の1〜3月期のDIはマイナス26・3。建設業はプラスマイナス0の飲食店に次いで高く、両業種を除く4業種は軒並みマイナス20〜40だった。
建設業の項目別の経営状況、経営実績の判断を見ると、「単価」がプラス16、「売上水準」がプラス2・4、「利益水準」がプラス6・5と受注価格の上昇や採算の改善に手応えを示す一方、「雇用状況」はマイナス46・3と全産業で最低。人手不足の厳しさが浮き彫りになった。
中小企業動向調査の対象は1002社(建設業125社、製造業343社、卸売業・小売業・飲食店・サービス業534社)。
【日銀短観とは】
統計法に基づいて日本銀行が行う統計調査。全国の約1万社の企業を対象に、四半期ごとに実施し、自社の業況や、売上高、収益、設備投資額などの企業活動全般にわたる項目について調査する。日銀が金融政策を決める際の判断材料の一つになる。「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いたDI値で示す。
提供:建通新聞社