北海道建設新聞社
2024/03/27
【北海道】ニセコの投資需要が富良野北の峰に流れる
道内の高級リゾート開発をけん引してきたニセコ地区の投資需要が、富良野市北の峰地区に流れ始めている。ニセコでは開発を制限する建築規制の新ルール導入や用地不足を背景に事業の転換期を迎えている。本道を代表する富良野スキー場があり土地が割安な北の峰に香港やシンガポールをはじめとする外国資本が注目。コンドミニアムなど土地売買が進んでいる。一方、両リゾート地とも建築費の高騰などで着工を延期するなどの課題も浮き彫りになっている。現地の状況を伝える。(小樽支社・佐々木陽一、経済産業部・武山勝宣、旭川支社・千葉有羽太)
「北の峰の人気エリアは坪単価が100万円に迫るほど高騰している。ニセコ中心部は300万円といわれているため、3分の1と考えればまだ安い」(不動産業者)。コロナ禍の収束で鼻息の荒い投資家にとって、北の峰はお得≠ノ感じるようだ。
富良野スキー場の真下に広がる北の峰町は、もともと小さな住宅街。雪質の良さが評判となってリゾート化が進み、外国人らの間で空き地や住宅が高値で売買されている。ホテルやコンドミニアムが密集する市街地は飽和しつつあり、南側に隣接する農村エリアまで投資熱が波及。一帯で不動産価格が上昇している。
土地売買と並行してホテルやコンドミニアム、別荘の需要が衰えない。富良野は夏のラベンダー観光が取り込めるため、宿泊施設を通年で稼働できる点が魅力だ。2023年12月に北の峰で新たなリゾートホテル「ノゾホテル」を開業したマレーシア企業も通年観光を投資の決め手として挙げている。
一方、ニセコ地域の開発も勢いが止まっていない。倶知安町では23年、韓国資本による「ムワニセコ」、シンガポールの企業が手掛けた「ニセコ郷」などが開業。香港資本が花園で「シャレーアイビーワイス」(全89室)、フィリピンの不動産開発業者が「ホテル101ニセコ」(全482室)の建設を進める。
同町内では投資の中心が移りつつある。ひらふエリアにあるニセコ東急グランヒラフスキー場周辺は飽和状態。用地も限られてきたことで、花園エリアが熱を帯びる。
町内でコンドミニアムの管理や不動産売買を手掛ける事業者は「ひらふ中心部はごちゃごちゃし、高級感をあまり感じなくなっている」と指摘。「花園に向かう辺りはまだ自由な区画で建てることができる。今後売買が進むだろう」と話す。
北の峰は高級リゾート地として発展するのか。当面の懸念は建築費の高騰や人手不足による開発への影響だ。ホテルやコンドミニアムが軒並み計画の見直しを余儀なくされ、着工に足踏みしている。初期投資の大幅な増加は企業や投資家を慎重にさせている。
ニセコも同じ問題を抱えている。道外の中堅ゼネコンは「設備業者を中心にサブコンがなかなか見つからないため工事を受注できない」と明かす。別のゼネコンは、作業員向けの宿泊施設が少なく、場所が見つかっても宿泊費が高いため経費がかさむと頭を抱える。中には施主側と工事費の折り合いが付かないため、計画スケジュールを見直すケースも出ているという。
国内外の投資家が優良な場所と位置付けるニセコや北の峰は、その立地をどこまで評価し、開発費用を上乗せできるかが鍵となる。
日本不動産研究所によると、ニセコの地価上昇は落ち着き始めたが今後、倶知安町内に北海道新幹線が開通するため、投資はコロナ禍前の需要に戻ると予測。北の峰も旭川空港や周辺地域との交通利便性の向上や、インフラ整備を進めればさらなる価値を生み、リゾート地として発展するとみている。