神奈川県企業庁は、効率的な管路更新に向けた先進技術の研究を民間企業と共同で進めており、実証実験を開始する。現在研究しているのは、ケーブル付きの水中カメラで内視鏡のように水道管内部を点検し、流れる水音と映像で水道管の健全性を診断する手法。従来の漏水調査の方法に比べて確実性が高まり、漏水の早期発見にもつながるため、約1年かけて効果を検証し、実用化を目指したい考えだ。
実証実験では、空気弁や消火栓など水道管に付属する設備を一時的に取り外して超小型録音機能付きのカメラを入れ、音と映像のデータを収集する。供用中の水道管を断水させず、水道水の水質にも影響を与えない手法だ。まずは水道管を流れる水音や埋設管の上を走る自動車などの環境音のデータを蓄積。収集したデータのうち、正常な水流音と異常な漏水音とを区別できるかを確認する。
カメラの映像では、水道管内部の腐食状況や、漏水修理履歴のある管路では漏水箇所の変状も調べる。水道管内部からの調査が有効と確認できれば、管路の健全性評価や更新の優先順位付けにも利用できると見込んでいる。
通常の漏水調査では、漏水探知機を用いて調査員が埋設管の上を歩き、地上から漏水音を探している。口径が大きい基幹管路などは埋設箇所が深くなっているため、地上まで漏水音が届かない可能性がある他、調査箇所によっては環境音が影響することもあるため、潜在的な漏水リスクは常に存在している。交通量が多い幹線道路や基幹管路などは、漏水箇所の推定が外れた際のリスクが高いため、調査の確実性を高めたい考えだ。
小型の水中カメラや録音装置は既に製品化されているが、録音機能がある水中カメラがなかったため、企業庁と民間企業が共同して開発した。共同研究は2025年3月末まで。実証実験で得られたデータを24年上半期までに分析する。下半期にはデータを機器に反映し、再度別の管路で実証実験を行う予定だ。
提供:建通新聞社