公益社団法人土木学会(会長・田中茂義大成建設会長)の令和6年能登半島地震における会長特別調査団が今月5、6日、珠洲および輪島両市の被災現場を視察し、半島のアクセスルートとなる幹線道路、災害時の緊急輸送道路といった地域の根幹であるインフラの耐震性強化、複合災害のリスクを考慮した安全安心のまちづくり、地震メカニズムの解明に総力を挙げていくとした。
特別調査団のメンバーは同学会から団長の田中会長、副団長の今村文彦副会長(東北大)、団員の家田仁氏(政策研究大学院大学/元土木学会長)、大原美保氏(東大)、北野利一氏(名古屋工大)、小林俊一氏(金大)、酒井久和氏(法政大)、多々納裕一氏(京大)、由比政年氏(金大)、三輪準二氏(土木学会専務理事)。
調査は5日に珠洲市宝立町の津波浸水個所および、真浦町の国道249号逢坂トンネル付近の大規模崩落個所、6日が輪島市熊野町の河原田川河道閉塞個所、河井町の被災市街地で実施した。
今回の地震災害の特徴として、群発地震に続いての震度7を記録した地震であり、地震動による建物や構造物の被害、土砂災害や液状化現象などに起因する被害、津波による浸水被害、火災発生による被害など、複合災害が同時に発生したと指摘。
緊急復旧や今後の本復旧・復興のメインルートとなるべき幹線道路に大きな被害が発生しており、能越道やのと里山海道といった道路やライフラインなどが寸断され、集落の孤立などが生じている。被災地への迅速な支援が円滑に進まない状況が生じ、地域の根幹をなすインフラの耐震性の課題が浮き彫りになったとしている。
今後の復旧・復興を迅速化するためには、余震や降雨、積雪、融雪などによるさらなる土砂災害の危険性に対し、2次災害発生を防止することが重要であり、河道閉塞などには出水期の2次被害に留意する必要があるとしている。
道路、上下水道の本復旧に関しては、今後も甚大な被害が発生することがないよう、脆弱な個所の補強やリダンダンシー(冗長性)の確保を図る必要があるとした。特に上下水道には、分散型・自給自足(オフグリッド)型のインフラ導入についても検討する必要があるとした。
輪島市につながる縦軸の幹線道路、珠洲市などにつながる横軸の線形改良・機能強化によって、能登半島における幹線交通路の構築を検討する必要があると分析している。